小売ビジネスの購買データや、サービスの利用データなどを利用して顧客をセグメントに分け、そのセグメントごとに最適なアクションを実行するときによく利用される「RFM分析」という手法があります。
このRFM分析は顧客セグメンテーションにおける定番の手法の1つですが、具体的な分析手順、セグメントの種類、セグメントごとにどのような打ち手をとるべきかを理解できている方は意外に少ないようです。
そこで、それらをビジュアルを交えて紹介する人気記事がありましたので、こちらに要訳として紹介します。
新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持の5倍のコストがかかるという調査があるにも関わらず、多くの企業は既存顧客を維持する方法を知りません。
また「Marketing Science(訳者注: マーケティング関連の学術専門誌)」に掲載された「ダイレクトメールの最適な選択」という論文では、「多くのビジネスにおいて売上の8割が2割の顧客から生み出されている」ことについて触れられています。
RFM分析は、そういったロイヤルティや収益性の高い顧客を特定することに役立ちます。さらにRFM分析は、継続して顧客でいてくれる可能性が高い顧客や、離反する可能性が高い顧客の理解にも役立ちます。
RFM 分析は「Recency」、「Frequency」、「Monetary」という3つの指標の単語の頭文字をとった分析手法ですが、各指標にしきい値を設定し、顧客をランク付けします。
ここからはそれぞれの指標が何を表しているかを紹介します。
Recencyは、顧客の最後の購買タイミングからの経過時間を表しています。
例えばあなたが映画のレンタルサービスを担当していて、「最良の顧客は過去 30日以内に1回は訪問するはず」と考えた場合、1ヶ月以内に購買行動があった顧客は最高のスコア (5段階のランク付けをした場合、5のスコア) を獲得することになります。
最高スコアを決めたら、そこを基準に他のしきい値を追加して、5以下のランクを割り当てていくわけです。
Frequencyは、顧客の購買頻度(回数) を表しています。
先程の映画のレンタルサービスに当てはめると、最良の顧客であれば月に1回、あるいは年に12回サービスを利用すると考えることができるかもしれません。
その場合、先程と同じように、月に1回、るいは1年に12回サービスを利用する人は、最高のスコアを獲得することになり、そちらを基準に他のスコアを割り当てることになるわけです。
Monetaryは、ある決まった期間(例: 直近1年間)に顧客があなたのサービスやプロダクトに費やした金額を表しています。
例えば、顧客の直近1年間の平均単価を計算して、そちらをもとに、Monetaryのスコア付けをどうするかを、先程と同様に決めることが可能です。
RFM 分析では、顧客1人1人に対して、3つの指標 (Recency、Frequency、Monetary)のスコア付けを行います。多くの場合、最高スコアは 5 、最低スコアは 1 で設定されます。
各指標をどういった基準でスコア付けするかは、先程紹介したように自身のビジネスのタイプや業種に合わせて決めることになります。
例えば、医療サービスの場合、過去1か月以内にサービスを受けた人は誰でも、Recencyに最高スコアを付けることができるかもしれません。
しかしUberのような配車サービスの場合、過去1か月以内にサービスを利用していたとしても、スコアは3以下になり、過去3日間に乗車した顧客に5のスコアを付けることになるかもしれません。
このようにFrequencyとMonetaryも同様に考えて、ランク付けを行います。
すると最終的に1人の顧客に対して、以下の3つの指標のランク付けが可能になります。
顧客 A - Recency: 5 - Frequency: 4 - Monetary: 2
直近の購買やサービスの利用履歴がある場合、その人はトップパフォーマーであることが多いため、RFM分析におけるで最も重要な指標はRecencyです。
そのため、多くの場合RFM分析では2次元で顧客をセグメントに分けて可視化することになりますが、2つの軸のうちの1つにRececnyを割り当てることになります。またもう1つの軸には、FrequencyとMonetaryのスコアの平均を利用します。
1人1人のRFMのスコアを計算したら、 RecencyをX軸に、FrequencyとMonetaryの平均をY軸に配置します。
先程の顧客を例に考えると、以下のスコアに顧客を配置するわけです。
顧客A - X軸(Recency): 5 - Y軸(FrequencyとMonetaryの平均): 3
以下がRFMのスコアを元につくった顧客セグメントですが、例えば、Recencyと、FrequecyおよびMonetaryの平均スコアが最も高い顧客セグメント(右上のチャンピオン)は、最高の顧客セグメントと捉えることができます。
全ての顧客は緑で表現される4つの好意的なセグメントと、赤・黄・青で表される4つのリスクの高いセグメントのいずれかに属することになります。
例えば、好意的なセグメントは以下のように捉えることが可能です。
残りの 4 つはリスクの高いセグメントです。
マーケティングにおいては、どのセグメントにどれだけのマーケティング費用をかけるかを検討し、費用を最適化することで、賢明な戦い方を選択することが重要です。
顧客を前述の8つのセグメントに分類したときに、ポジティブなセグメントに属する顧客が多いビジネスであれば、ビジネスは良好な状態と言えます。
一方で、リスクの高いセグメントに多くの顧客が集中している場合、顧客の維持に問題があり、顧客の継続的な購買を妨げる問題があると考えられ、彼らのフィードバックを得て、ビジネスを改善する必要があります。
顧客をセグメントに分けられたら、収益を増やすこためにセグメントごとにプロモーションやマーケティング施策を検討・実行します。
例えば、購買頻度・金額が少ない下部の3つの顧客セグメントについて考えてみます。
このセグメントに対しては、低価格の商品を割引価格で提供したり、無料のギフトを提供することで常連客に押し上げることを狙えます。
最後の購買から時間が経っている左端の3つのセグメントに対しては、期間限定のオファーを提供することが有効かもしれません。
特に、高額支出セグメントの顧客は失うべきではないので、1つでもいいので定期的にあなたのサービス商品やサービスを購入してもらえるような仕組みを考えましょう。
重要なのは、顧客を「チャンピオン」「高ロイヤルティ」「高ロイヤルティ予備群」に誘導する「仕組み」を作ることです。
多くの企業は、最も優良な顧客を無視するという間違いを犯しています。その結果、顧客は無視されていると感じ、ロイヤルティが低下し始めます。
彼らのサポートが当然だと思われないように、彼らに報いることができるような仕組みを作るべきです。
RFM分析を行うときには注意すべきいくつかのことがありますので、最後にそちらを紹介します。
以上、要約終わり。
今回は顧客セグメンテーションにおいて定番の分析手法であるRFM分析の具体的な手順や顧客をセグメントに分けた後の打ち手を紹介しました。
記事の中でも触れられていましたが、RFM分析自体は決して難しい分析手法ではありません。しかし継続して実施することを考慮すると、都度、手作業でRFM分析を行っていては、業務時間を圧迫するだけでなく、計算間違いなどの人的なミスが生じることになるため、作業を自動化することが重要です。
また、こちらも本文でも触れられていましたが、RFM分析は非常に有益な手法ですが、データを使って顧客をセグメントに分ける「クラスタリング」といった手法もあるため、状況にて応じて最適な手法を使った顧客をセグメントに分け、最適な打ち手を実行していくことが有効と言えそうです。
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