エンゲージメント:捉え方一つで全ての物事が変わって見えるコンセプト

どうも!シリコンバレー発、データサイエンスの民主化を行なうためのツールを作っているExploratoryという会社で働いているIkuyaです。

今回はSaaSのビジネスを語るうえでは避けては通れないエンゲージメントというコンセプトについてです。カスタマー・サクセスの参考書籍として紹介されることも多いCustomer Success(英語版日本語訳版)という本の著者の1人であるリンカーン・マーフィーのブログに短いですがよくまとまっている記事がありましたのでここで紹介したいと思います。

  • SaaS Churn Rate Improvement - Link

記事そのものはチャーン率の改善といった文脈で書かれていますが、今回はエンゲージメントの説明部分のみ抜粋して要約していきます。

以下、要訳。


エンゲージメントとは何なのか

もしあなたがSaaSビジネスに携わっているのであれば、SaaSビジネスの良の顧客は、ただお金を払ってくれるだけの顧客ではなく、サービスを実際にに利用・活用してくれる人です。

そしてSaaSビジネスで成功したい企業はエンゲージメントの高いユーザーを獲得したいもでのです。

ところで我々がよく耳にするエンゲージメントという言葉は、そもそも何を意味しているのでしょうか。もし10人にエンゲージメントという言葉の定義を尋ねると、10通りの回答が返ってくると思います。

全ての人に同意してもらうつもりはありませんが、私は以下のようにエンゲージメントを定義します。

エンゲージメントとは顧客が、あなたの提供するSaaSのサービスに何らかの価値を見出した時に生じるものと定義します。

上記のようにエンゲージメントを捉えることで、色々な物事が変わって見えてきます。

具体的にはエンゲージメントを「プロダクトのみ」の問題として捉えるのではなく、それが実際には「ユーザー」に関わる問題であることが見えてきます。

また例えば私がオンボーディングが機能していると言ったとしても、それは必ずしもエンゲージメントが得られることを意味していません。なぜならオンボーディングそのものはエンゲージメント抜きでも機能するからです。

一方でエンゲージメントを得るためには、オンボーディングの仕組みがうまく機能することが必要で、ただそれだけでは十分ではないのです。

さらにエンゲージメントを一回きりのイベントとして捉えるのを止めることで、ユーザーがサービスに対して感じる価値というのは時間と共に変化していくものだと認識することができます。そうすることで、こうした変化に合わせたエンゲージメントというものを捉え直していくことができるようになるのです。

例えば、無料トライアル中のユーザーのエンゲージメントと、購読を開始してから6ヶ月経った後の顧客のエンゲージメントが違うものであることを想像すれば、非常に解りやすいと思います。

エンゲージメントを計測する意義

エンゲージメントを計測することは、ユーザーがあなたのSaaSサービスを利用して、何に価値を感じるかを理解することを意味します。

そしてエンゲージメントを計測することは同時に(顧客が感じる価値というものは変わっていくので)顧客の変化に沿って、顧客が成功の歩みを進められているかどうかを確認できることを意味しています。

とかく我々は顧客がこういったアクションをしたとか、こういった機能を使ったといった、個別の事象に注目しがちですが、顧客が提供されるサービスに価値を見出してくれているか、という観点で物事を見ようとすると、上述した単独のアクションや機能利用でエンゲージメントを語ることが疑問に思えてきます。

忘れてはいけないのは、顧客というものは同質ではないということです。どういうことかというと、ある顧客にとってのエンゲージメントは、別の顧客にとってのエンゲージメントとはなるわけではないということです。

エンゲージメントを計測する時にありがちな間違い

よくエンゲージメントを計る指標としてログイン回数というものが使われるのですが、これまでの話の中で、実はエンゲージメントの理解にはログイン回数だけを重要な指標として見ておけばいいわけではないことがわかってきたと思います。

例えばあるサービスに3回ログインしている人のエンゲージメントが高いということはありえますが、顧客が提供されるサービスに価値を見出しているかをないがしろにして、クリックの回数だけを取り上げて、エンゲージメントを議論することは無意味です。

実際問題、ただ3回のログインが確認されただけで、それ以外に何もアクションが確認されなかった場合、チャーンするリスクがあるかもしれません。同時にこれは顧客がサービスの利用を開始しようとしているのかもしれず、何らかの打ち手が打てるタイミングとも言えます。

ところが、ログイン回数そのものをエンゲージメントとした場合、(実際多くの場合がそうであるのだが、)自分たちが提供する価値を理解してもらう機会を逸して、さらにはチャーンのリスクを増やすことにもなってしまうわけです。


以上、要訳終わり。

あとがき

本日はSaaSのビジネスにおいてよく耳にするエンゲージメントのコンセプトについて紹介しました。

本文ではエンゲージメントとは顧客が提供されるSaaSのサービスに何らかの価値を見出すことと定義されていましたが、これは非常に的を得た表現のように思います。

またエンゲージメントが時間とともに変わっていくということも、おさえておきたい重要なポイントですね。

加えて本文ではエンゲージメントは単一のアクションの有無やその回数といった指標で議論されるべきではないと触れられていますが、一方でエンゲージメントを計測することが難しいかと言うと、必ずしもそうではなく本文でも示唆されていたように、複数の軸をもってエンゲージメントを計測することは十分に可能です。

ではなぜエンゲージメントを理解することが重要なのかについての話や、どのようにしてエンゲージメントを計測するかについての話はまた別の機会にできればと思います。

なおExploratoryのCEOであるKanからもエンゲージメントに関する面白い記事がいくつか出ているので、よろしければどうぞ!

  • スタートアップのためのパワーユーザー・カーブ分析 - Link

  • SaaSにとって最も重要なのに誰も見てないKPI:プロダクト・エンゲージメント - Link

  • イギリスの1888創業の老舗メディア企業がシリコンバレーのSaaS企業のようにデータを使って成長しているという話 - Link


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