どうも!ExploratoryのIkuyaです。
以前の投稿で、顧客がプロダクトに価値を感じているかどうかを測る北極星となる重要指標として、North Star指標を紹介しました。
そしてシリコンバレーの巨大企業の多くは独自のNorth Star 指標を定義し、モニターしています。その中でもFacebookの「10日間で7人以上の友達を追加したかどうか」、Slackの「ユーザーからの投稿が2000を超えたかどうか」といった指標はよく知られているNorth Star指標です。
本日は実名制Q&AサイトのQuoraというサービスに投稿された「どうすればFacebookのようにNorth Star指標を見つけて、ビジネスをより速く成長させられるのか」という質問に対して、シリコンバレーでもトップクラスのベンチャー・キャピタルであるA16ZのAndrew Chenから面白い回答が出ていたので、そちらを紹介します。
以下、要約。
Facebookのように「10日間で7人の友達を追加したかどうか」といったNorth Star指標を見つけ、ビジネスを成長させるにはどうすれば良いのか、という質問に対する私の答えは以下となります。
Facebookのように、いかなる時もシンプルなゴールを設定することは重要です。なぜならシンプルなゴールを設定することで、チームが何に集中すべきなのかが明確になるからです。
そして、これらの指標を設定するときに重要なことは、設定したゴールが理に適っていて、それが覚えておけるぐらいシンプルな指標になっているということです。
このような指標を定義するときは、顧客がどれだけサービスに価値を感じているかを顧客の行動から定量的に評価することから始めます。具体的には以下のような指標を定義します。
では、上記のような定量的な指標そのものはどのように見つけ出せばいいのでしょうか。
残念なことに、どのようなビジネスにもあてはまる万能の答えはありません。自分たちが提供するサービスやプロダクトに合わせて、指標を定義していく必要があるからです。
- シリコンバレーの企業は、どうやってNorth Star指標を選んでいるのか? Netflix、LinkedIn、Instacart、Dropboxなどの企業が独自に設定する指標とは - リンク
ただし全く共通するものがないわけではなく、例えばFacebookやTwitterは広告で収益をあげるビジネスモデルのため、彼らはエンゲージメントやサービスの利用頻度により注目することになるわけです。
North Star指標を決めたら、次にすることは直近X日の間にサインアップした顧客といっ、コホートに分けてデータを分析していくことです。
- 今さら聞けないサブスクリプション・ビジネス最重要指標 — Vol. 5— コホート分析 - リンク
コホートに分け終わったら、それぞれの顧客の、サービスやプロダクト上でのアクティビティ情報を集めていきます。例えばFacebookのようなサービスの場合、以下のような情報を集めます。
こうした情報を集めていくと、最終的に複数の指標を列に持つ、1行が1顧客のテーブルができあがります。
続いてするべきことは、このテーブルを利用して列ごとの相関を見て、自分達で決めたNorth Star指標に相関する指標を探すことです。
こうすることで、North Star指標を上下させる要因について仮説をたてることができるようになります。
ただし、ここで一点気をつけるべきポイントがあります。それは因果関係です。
例えば、消防車の数と火災件数に相関があるので、消防車が火災を引き起こしているといった誤った仮説を立ててしまう話は有名ですが、そのような仮説をたてないように注意が必要です。
こういった分析をしていると、特定の指標がNorth Star指標と強い相関を持つケースが稀にありますが、多くの場合そうはなりません。
そういった時は、重回帰分析をすることで、より適切に複数の指標間の関係に対する理解を深めることができます。
ただし、直近の28日間で何日間サービスを使ったか、すなはちプロダクトやサービス上でアクティブだった日数をNorth Star指標として設定したときに、友人の数、投稿数、いいねの数、その他20の要因(変数)によってNorth Star指標が影響を受けているといったインサイトは(フォーカスすべきアクションが決まらないという意味において)役に立つインサイトと言えません。
チームの協力を得るためにはシンプルなモデルを見つける必要があります。
重回帰分析によって効果的なモデルが見つかったら、次のステップはA/Bテストをして、構築したモデルが正しいかを検証するステップです。
North Star指標に影響がありそうな変数に対する仮説を立てたら、それらの変数に優先順位を付けます。
続いてそれらの変数を一つずつ意図的にコントロールし、North Star指標に影響しているかを検証していきます。
もし意図的に数値をコントロールしたグループとそうでないグループとの間に差が現れたら、構築したモデルが有効であると想定できます。
逆に効果が出ないようであれば、効果的なモデルがつくれていないことになるわけです。
重回帰分析を利用して有効なモデルが見つかったとしても、それで終わりではありません。
次のステップは作成したモデルをチャートなどを使って可視化して、誰もが簡単に理解できるようにシンプルな形で説明することで、周囲の協力を得て、North Star指標が改善できるようにプロダクトをアップデートしていくことです。
以上、要約終わり。
本日はFacebookのように、どのようにNorth Star指標を定義していくのかと、North Star指標を改善してビジネスをドライブするための指標をどのように見つけていくかについての記事を紹介しました。
記事の中で触れられていた問題を定義し、重回帰分析といったデータサイエンスの手法を駆使した分析を行い、さらにテストをして仮説の検証をする一連のフレームワークをExploratoryではアナリティカル・シンキングと呼んでいるのですが、やはりシリコンバレーの成功企業の多くが、このようなフレームの元でビジネスを大きく成長させていると言えます。
本文でも紹介されていた重回帰分析といった統計の手法だけでなく、機械学習についてなど、データサイエンスの分析手法を一から体系的に学び、現場で使える知識とスキルを身につけていただくためのトレーニング、データサイエンス・ブートキャンプを1月に開催します。
データを使ってビジネスを成長させたい、または問題を解決したいという方は、ぜひこの機会に参加をご検討ください!
詳細はこちらになります。
あとがきでも紹介したアナリティカル・シンキングについてのセミナーも1月に開催します。
今回はアナリティカル・シンキングというフレームワークに加え、デジタル・マーケターにとって必須とも言えるWeb解析領域における、データサイエンスの手法の活用方法も合わせてご紹介します。
GoogleアナリティクスなどのWeb解析ツールを利用しているデジタル・マーケターやプロダクト担当の方はぜひこの機会に参加をご検討ください!
詳細はこちらになります。