どうも!ExploratoryのIkuyaです。
今日はサーバなどのモニタリングサービスをSaaS形式で提供しているData DogのS-1(訳者注:アメリカ合衆国において、新規株式公開(IPO)を行うために提出が義務付けられている書類のこと)について面白い解説記事がありましたので、そちらを紹介します。
以下、要約。
クラウドシステムのインフラストラクチャのモニタリング業界でリーダーであるDatadogは1億ドルのIPOを申請しました。申請金額は1億ドルですが、1億ドル以上の値がつくのは確実です。
同社の事業規模がどの程度かというと2018年に1億9,810万ドルの収益を上げており、これは前年比97%増となります。2019年の第2四半期には、100以上の国から8,846人の顧客を獲得しています。
同社は2010年にニューヨークで創業しました。現在24か国に1,212人の従業員がいて、従業員の約31%はアメリカ国外にいて、その半分はフランスにいます。
過去6か月のデータを見ると、顧客の40%がDatadogの複数のプロダクトを使用していることが分かります。これは1年前の10%から大幅に増加しています。
セルフサービス型のプロダクトの提供とクロスセルによって、Datadogはここ最近株式公開する企業のなかでも最も急速な成長を成し遂げるているようです。
そしてDatadogは「導入しやすく、短時間で価値が得られる」プロダクトを中心に、「着地そして拡大」型(まず数名のユーザーが顧客としてプロダクトを使い始めた後に、組織の中でより多くのユーザーへと拡大していくタイプ)の戦略を採用しています。
同社は2019年の最初の6か月で前年比79%増の1億5330万ドルの収益を上げました。ほぼすべての収益はサブスクリプションからのもので、ARR(Annual Recurring Revenue/年間定期収益)見込みは3億3,290万ドル、前四半期ベースで前年に比べて82%増加しています。
以下に、S-1の関連する他のデータをいくつか紹介します。
またDatadogのGTM(Go-To-Market /市場へのアプローチ戦略)は非常に効率的です。Datadogではほとんどの顧客が自らサインアップし、セルフサービスでプロダクトを利用しますが、一方で以下の4つのチームがビジネスの拡大を牽引しています。
容易にプロダクトの導入ができて、短期間でプロダクトからの価値が得られるため、「着地そして拡大」型モデルが成り立つわけで、そこから得た収益で彼らはよりイノベーションに投資できるわけです。
さらにNRRが146%であることからも分かるようにDatadogは理論上、新規顧客への販売を全てやめたとしても、前年比で50%収益を増加させることができるのです。
Disclosure Period(訳者注:S-1を提出した直近6〜8四半期のこと) におけるARRが100万ドル前後のSaaS・クラウド企業は25社ほどいるのですが、DatadogはZoomとCrowdStrikeに次いで急成長しています。
Datadogはコホート(購読開始タイミングで分けられる顧客グループ)ごとの収益に関するチャートを公開しているのですが、時間がたつにつれて、各コホートからの売上が大きくなっていることが分かります。
例えば2014年のコホートの2014年末のARRは480万ドルなのですが、4年後の2018年末には1920万ドルつまり4倍になっているわけです。
さらに2018年末時点での収益の上位25社のARRは、購読開始月からの増加量でいうと、中央値ベースで33.9倍になっているとのことです。
訳者注:コホート毎の収益を可視化するレイヤー・ケーキ・チャートの作り方のブログを書いていますので、紹介させていただきます。
SaaSのコホート分析でよく使われるレイヤー・ケーキ・チャートの作り方
以上、要約終わり。
本日はZoomに次ぐ成長を見せるSaaS企業のDatadogの成長の秘訣がどこにあるのか、具体的な数字をもとに検証する記事を紹介しました。
いくつか興味深いポイントがあると思います。例えば、これだけの成長を遂げる企業も1,000の顧客を獲得するのに、創業から5年を要していることと、もちろん投資状況や戦略にもよりますが、顧客は線形で増えていくというよりは、対数的に増えていくことは非常に興味深いですね。
ただそれよりも興味深いのは、下記の二点かと思います。
前者はまさしく、「導入しやすく、導入から短期間で価値を得られる」ことの何よりの表れであり、後者については、「着地そして拡大」型およびクロスセルがうまく言っているということだと思います。
結果として上記により収益が増え、増収によりさらに顧客をスティッキーにするようなプロダクト・イノベーションやプロダクト・ポートフォリオの拡充に投資ができ、それがアップセル・クロスセルにつながる、つまりはプラスの循環ができあがっている、ということかと思います。
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