SaaSアナリティクス — 今さら聞けないサブスクリプション・ビジネス最重要指標 — Vol. 5— コホート分析

どうも!シリコンバレー発、データサイエンスの民主化を行なうためのツールを作っているExploratoryという会社で働いているIkuyaです。今回は前回の記事で少しだけ触れた以下の続きについて話したいと思います。

チャーンを一つの数字として毎月追っているだけだと、ビジネスの問題がしっかりと把握できていないという事態に陥ってしまいます。

チャーンの特性と生存曲線

まず話を進めるうえでチャーンがどういうものか今一度考えてみると、以下のことが言えます。

  • 顧客は時間が経つほど解約する可能性が高まる(例えばあなたが何らかのSaaSサービスを購読しているとして、そのサービスを明日辞めている可能性と、1年後に辞めている可能性を比べたら1年後にやめている可能性の方が高いということを想像すると分かりやすいと思います)
  • 最終的には、みんないつかは解約する

そして上記のコンセプトをラインチャートで表現したものとして生存曲線というものがあります。

この生存曲線ではX軸がサービス開始からの経過時間を表しており、Y軸は母集団の生存(確)率を示しています。

ある種当然のことですが、下図のようにサービス開始から経過時間毎の生存率を比べてみると、生存率はサービス加入からどれぐらい経過したかによって異なってくることが分かります。

一方で、前月からのチャーン率を見てみると、前月からのチャーン率もサービス加入からどれぐらい経過したかによって異なってくることが分かります。

この、前月からのチャーン率をもう少し解りやすくしたものが以下の図となります。サービス加入からの経過時間とチャーン率が異なる3つのグループがあります。

ここから顧客のグループが以下のように分布している3つのケースを見ていきます。

  • 新規顧客と既存顧客の割合の偏りが少ない
  • 急成長していて新規顧客の割合が高い
  • 成長が鈍化していて、既存顧客の割合が高い

新規顧客と既存顧客の割合の偏りが少ないケース

例えば下記のように新規顧客と既存顧客のバランスがとれている集団の全体のチャーン率を算出すると以下になります。

急成長していて、新規顧客の割合が高いケース

次いで下記のように急成長していて、全体に占める新規顧客の割合が高い集団の全体のチャーン率を算出すると以下になります。

成長が鈍化していて、既存顧客の割合が高いケース

最後に下記のよう成長が鈍化していて、全体に占める既存顧客の割合が高い集団の全体のチャーン率を算出すると以下になります。

この3つ、特に急成長しているケースと成長が鈍化しているケースを比較してみると全体のチャーン率は以下のように新規顧客割合が高い方が悪いということができます。

言い換えれば成長が鈍化し、既存顧客の比率が高くなるに連れて、チャーン率は自然と改善しているように見えてしまうのです。でもそもそもビジネスの成長のために新規顧客が減ればいいという話はありえませんよね。チャーン率だけを最適化しようとすると変な話になってしまうわけです。そこでSaaSの世界ではコホート分析をすることになります。

コホート分析

ではコホート分析がどういったものかというと、購読し始めた時期で顧客をグループ(コホート)にわけ、そのコホートごとの生存曲線の傾きを比べる分析で、以下のようなものになります。

良い例

ではどのような結果が得られれば良い結果と言えるかと言うと、以下のように、経時と共に生存曲線が緩やかになっているケースがそうと言えます。効果的な集客やサービスの改善により、経時とともに、チャーンが起きにくくなっていると言うことできます。

悪い例

ではどのような結果が得られると悪い結果と言えるかと言うと、以下のように、経時と共に生存曲線が緩やかになっているケースがそうと言えます。ここでは外部要因なのか、内部要因なのかは分かりませんが、ユーザ体験に何らかの問題が生じており、経時とともに、チャーンが起きやすくなっていると言うことできます。

まとめ

このように顧客のチャーン率だけを追うだけでなく、コホート分析を行うことでSaaSのビジネスにおけるチャーンの現状を正しく認識できるようになるわけです。一方で正しく現状認識が出来るようになったとしても、どのような打ち手でチャーンを減らすかといったインサイトを得ることは難しいです。Exploratoryでは様々なコホートを比べるだけでなく、機械学習や統計のアルゴリズムを駆使した”アナリティクス”でこの生存曲線の傾きを緩やかにする因果関係に迫ることを提唱していますが、それについてはまた別の機会で取り上げたいと思います。


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