One-Way ANOVA(分散分析)は、3つ以上のグループの数値に差があるかを調べる分析手法です。この分析の特徴は、「全体の差」と「グループ間の差」を比較して、本当に意味のある違いがあるかを判断できる点にあります。
この分析には3つの重要なポイントがあります。1つ目は「全体のばらつき」を見ることです。例えば100人の点数データがあれば、100個の点数がそれぞれ全体の平均点からどれくらい離れているのかを計算します。2つ目は「グループごとの差」を見ることです。その100人が3つのグループに分かれていれば、各グループの平均点が全体の平均点からどれくらい離れているのかを計算します。3つ目は、「グループごとの差」が「全体のばらつき」の中でどれくらいの割合を占めているかを見ることです。この割合が大きければ、グループ分けには意味があると判断できます。
多重比較という方法を使えば、さらに詳しい分析ができます。これにより、どのグループとどのグループの間に差があるのかを、統計的な根拠を持って判断できます。例えば「全体としては差がある」という結論に加えて、「AグループとBグループには差がある」「BグループとCグループには差がない」といった具体的な発見が得られます。
このように一元配置分散分析は、データ全体の特徴を考慮した上で、グループ間の差を科学的に評価する手法です。そのため、より信頼性の高い意思決定につながります。
One-Way ANOVA(分散分析)は、グループ分けされたデータ間での数値の差を統計的に検証する際に使用します。経験年数による売上の違いを分析してキャリアパスを設計したり、製造ラインごとの不良品率を比較して品質管理を改善したりする場面で効果を発揮します。
特に、複数の選択肢や条件から最も効果的なものを特定したい場合に有用です。例えば、複数の販促施策の効果を比較する際、どの施策が最も顧客の購買額を増加させたかを検証できます。また、顧客セグメントの分類が実際の購買行動の違いを適切に反映しているかの検証にも活用できます。
データ例:
小売業での使い方
製造業での使い方
人事部門での使い方
マーケティング部門での使い方
今回は「営業担当者別の売上データ」を使用します。データはこちらからダウンロードが可能となっています。
このデータは営業担当者の売上実績に関するデータで、1行が1人の営業担当者のデータです。
One-Way ANOVAを実行するためには、以下のデータ構造が必要です:
営業担当者売上分析データから「アナリティクス・ビュー」を開きます。
タイプに「統計的検定」を選び、「One-Way ANOVA (分散分析)」を選択します。
目的変数には「売上金額」の列を、説明変数には「経験年数区分」の列を割り当てます。
最後に、「実行」ボタンをクリックして結果を確認します。
「サマリ」タブでは分散分析の基本的な結果を確認できます。
P値が0.05未満で、経験年数区分による売上金額に統計的に有意な差があることがわかります。P値が7.45e-13の場合は、7.45の10の-13乗となるため、限りなくP値が小さいということを表します。
「確率分布」をクリックすると、F分布上での検定統計量の位置を確認することができます。
この結果から、観測されたF値が棄却域に入っており、帰無仮説(「経験年数区分によって売上金額に差がない」という仮説)を棄却できることがわかります。つまり、経験年数区分によって売上金額に違いがあり、その結果は統計的に有意であると判断できます。
「多重比較」タブではグループ間の個別の差を確認できます。
Tukey HSD検定の結果から、全ての経験年数区分の組み合わせで統計的に有意な差があることがわかります。特に「5年以上」と「1年未満」の間で最も大きな差が見られます。
「平均値」タブでは各グループの平均値と信頼区間を視覚的に確認できます。
エラーバーの重なりが小さいことから、各経験年数区分間で明確な売上の差があることが確認できます。「5年以上」のグループは他のグループと比べて明確に高い売上を示しています。
One-Way ANOVAは、3つ以上のグループ間の差を統計的に検証する強力な手法です。今回の分析では、経験年数区分による売上金額の違いを確認し、経験年数が長くなるにつれて売上が向上することが統計的に示されました。この結果は、キャリア開発プログラムの設計や、営業チームの構成を検討する際の重要な根拠となります。