このノートはサブスクリプション型のビジネスに特有な指標の作成・可視化や分析方法を効率的に学んでいただける「サブスクデータ分析」のトライアルツアーの第2弾、「レイヤーケーキ・チャートの作成」です。
SaaSやサブスクリプション型のビジネスでは、ビジネスの効率的な成長を示す「健康度」を可視化するために「レイヤーケーキ・チャート」がよく使われます。
そこで、今回は顧客の支払いのデータを加工して、「レイヤーケーキ・チャート」を作成してみたいと思います。
所要時間は20分ほどです。それでは、さっそく始めていきましょう!!
レイヤーケーキ・チャートとは、「利用開始時期」で顧客をグループ(色)分けしたうえで、それぞれのグループのMRR(月間定期収益)の推移を可視化したものです。
サブスクリプションの開始時期が古いグループから新しいグループとなるように積み上げたものが階層(レイヤー)に見えるため、「レイヤーケーキ」と呼ばれています。
例えば、以下はビジネスチャットのSaaSサービスを展開するChatwork様が2022年12月期の第2四半期決算で発表していたレイヤーケーキ・チャートですが、このチャートを見ると、ひと目でうらやましいほどにビジネスが効率的に成長していることが分かります。
なぜばら、利用開始時期によるそれぞれの顧客グループから得られる収益が、時間の経過と共に増加しているからです。
例えば、2018年に利用を開始した顧客から得られる収益は時間の経過と共に増えています。
チャーン(解約)が全く発生しないビジネスはないため、それぞれのグループからのMRRは時間が経つに連れ減っていくものです。
しかし、顧客がプランをアップグレードしたり、ライセンスの数を増やしたりした場合には、このグループからのMRRはチャーンによる減少分を上回って増加することもあります。
そして、こうした傾向を示しているのが上記のChatwork様のレイヤーケーキ・チャートなわけです。
ではどのような、データがあればレイヤーケーキ・チャートが作成できるかというと、以下のような、1行が「1顧客の毎月の支払い」を表し、その顧客の「利用開始日」を列に持つデータがあれば、レイヤーケーキ・チャートは作成できます。
このようなデータがあれば、「エリア」チャートを使って、MRR(月間定期収益)を可視化し、「色で分割」に「利用開始日」を選択してレイヤーケーキ・チャートを作成できます。
しかし、手元にあるデータに顧客ごとの利用開始日の列がない場合もあります。
そこで今回は、「サービスの利用開始日」の列を追加して、レイヤーケーキ・チャートを作成します。
今回のサンプルデータはサブスクリプション型のビジネスの支払いデータです。データはこちらのページからダウンロードできます。
このデータは、一行が一人の顧客の月ごとの支払い履歴を表していて、列には以下の情報があります。
Exploratoryを起動したら、プロジェクト「新規作成」ボタンをクリックします。
プロジェクトを作成するためのダイアログが表示されるので、任意の名前をつけて、作成ボタンをクリックします。
プロジェクトを作成することができました。
プロジェクトを作成することができたら、次はデータをインポートします。データはこちらのページからダウンロードできます。
支払いデータをダウンロードできたら、ダウンロードしたフォルダを開き、「支払いデータ(レイヤーケーキ・チャート作成用).csv」をExploratoryの画面にドラッグ&ドロップします。
すると、インポートダイアログが表示されます。
インポートダイアログでは左側にある項目から、データをインポートする際の設定を指定できますが、今回は設定は不要なため「インポート」ボタンをクリックします。
するとデータフレームの設定ダイアログが表示されるので、任意のデータフレーム名を設定します。
今回は「支払い」という名称に変更して「保存」ボタンをクリックします。
支払いデータをインポートできました。
今回は元のデータに「開始日」の情報がないので、テーブルビューに移動して、データを加工します。
今回は顧客ごとに「開始日」を計算したいので、「支払い日」の列ヘッダメニューか ら「表計算を作成」の任意のメニュー(今回は「行番号」)を選択します。
表計算のダイアログが表示されたら、値に「支払い日」、計算のタイプに「最初の日(MIN)」を選択します。
続いて、「列名を指定する」にチェックを付けて列名を「開始日」にします。
プレビューをボタンをクリックすると、全ての日付が同じになっていることが確認できます。
今回は、以下のように「顧客ごと」に開始日を計算して、開始日(月)ごとのグループに分けたいです。
そこで、グループに「顧客ID」を選択し、「プレビュー」ボタンをクリックします。
顧客ごとに「開始日」を計算できていることを確認できたら、「実行」ボタンをクリックします。
顧客ごとの「開始日」の列を追加できました。
データの準備ができたので、レイヤーケーキ・チャートを作成します。チャートビューに移動し、チャートタイプに「エリア」を選択します。
続いてX軸に「支払い日」を選び、丸め処理に「月」を選択し、
Y軸に「支払い金額」を選び、集計関数に「合計値(SUM)」を選択します。
最後に、色で分割に「開始日」を選び、スケールには丸め処理の「月」を選択します。
MRRを利用開始時期ごとにグループに分けられましたが、継続期間が短い顧客から順に下からMRRが積み重なっていて、各コホートの推移が直感的に分かりづらくなっています。
レイヤーケーキ・チャートでは継続期間が長いコホートから順にMRRを積み上げます。
そこで、「色で分割」のメニューから「色、グループ、並び順」を選択して、色の「並び順」を変更します。
「色、グループ、並び順の設定」のダイアログが表示されたら、「方向」を「下から上」に変更して、適用します。
継続期間が長いグループから順にMRRを積み上げられました。これで、レイヤーケーキ・チャートの完成です。
このビジネスでは、直近、サービスの利用を開始した顧客のリテンションも、昔にサービスの利用を開始した顧客のリテンションをあまり変わっていないようで、リテンションが改善しているとは言えません。
サブスクリプション型ビジネスユーザー様向けのトライアルツアーの他のパートは下記のリンクからご確認いただけます。
次回はビジネスの成長には欠かせない、新規顧客のコンバージョン(獲得)の要因分を分析し、さらには見込み顧客がコンバートする確率を予測します。
今回と同じく、20分程度終えていただける内容になっていますので、是非、お試しください!
SaaSなどを始めとするサブスクリプション型ビジネスにとって重要なKPI、データの加工、可視化、統計・機械学習といった様々なデータサイエンスの手法やシリコンバレーなどでの事例を1つのページにまとめて紹介しています。
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