XmRチャートの紹介

XmRチャートとは、時系列データから得られた値がシグナルなのか、それとも想定される通常のばらつきなのかを判断するために使えるチャートです。

例えば、以下のようにラインチャートを使ってサインアップ数を毎月モニタリングしていたとします。サインアップ数は毎月上がったり下がったりしています。つまり、値はいつもばらついています。

ここで質問として、それぞれの値の変化は注意しなくてはいけないものなのでしょうか、それとも通常のデータのばらつきとして無視しても構わないのでしょうか。

この質問に答えを出すのに役に立つのがXmRチャートです。

XmRチャートとは、ラインチャートの上にいくつかの横線(リファレンスライン)を描いたものです。真ん中の横線が全期間の平均値、上と下にある横線は管理限界と呼ばれるものです。この上下の管理限界の線の間がデータの「通常のばらつき」が想定される幅を示します。

値が通常のばらつきの範囲内に収まるようであれば、それはただのばらつきであり、特に調査も行動も起こす必要はないと判断します。

しかし、もしサインアップ数が上か下の限界線を超えた場合、それは想定されるデータのばらつきを超えた何かが起きているというシグナルと判断します。

この場合は、何が要因なのか調査する必要があります。

例えば、これまで行ってきた施策の効果がでてきたからなのかもしれません。または何か特別な外部要因があったのかもしれません。

このように、シグナル(特別なばらつき)とノイズ(通常のばらつき)を切り分けることで、データを見ていつ必要な必要な行動を取るべきなのかがわかるようになります。これがデータを使ってビジネスを改善していくためにはXmRチャートは必須の分析手法だと言われる所以です。

XmRチャートのセミナー

XmRチャートについて詳しく紹介したセミナーは、下記からご覧いただけます。

XmRチャートの作り方

XmRチャートを作成するために、チャート・ビューを開きます。

チャートのタイプに「ライン」を選択します。

次に、X軸には「年月」を選び、日付の集計単位は「丸め処理の月」を選択します。また、Y軸には「サインアップ数」を選び、集計関数には「合計値(SUM)」を選択します。

これにより、月ごとのサインアップ数の推移を可視化することができました。

では、このチャートにXmRチャートとしてばらつきの範囲を可視化していきましょう。

Y軸のメニューから「リファレンスライン」を選択します。

リファレンスラインのタイプには「平均値(MEAN)」を選択します。

次に、範囲タイプには「管理限界(X)」を選択して、適用ボタンをクリックします。

これによって、XmRチャートとしてサインアップ数の管理限界(ばらつき)の範囲を可視化することができました。

管理限界を計算する元となる期間を指定する

例えば、2024年4月から新たな施策を実施していたとします。そこで、2024年3月までのデータを元にXmRチャートの管理限界の範囲を計算し、その限界の幅と比べて現在のサインアップはどうなのかを分析したいと思います。

その場合は、管理限界を計算するデータの範囲を指定することができるので、ここでいっしょにやってみましょう。

リファレンスラインの「平均値(全体)」と書いてある緑のテキストをクリックします。

リファレンスラインの設定のダイアログが表示されるため、「ベースデータの範囲」に「より前」を選択します。

値に対して「2024-04-01」を指定して適用ボタンをクリックします。

これにより、2024年の3月までのデータを元にしてXmRチャートの平均と管理限界が計算され可視化されるようになります。

この結果を見ると、2024年の6月や7月の値は、それまでの通常のばらつきの範囲を超えています。つまり何か特別なことが起きているということです。

今回の場合は、すでに何らかの施策を打ったことがわかっているので、その効果が出始めたと言えます。

シグナルかどうかを判断するための3つのルール

XmRチャートを使ってシグナルかどうかを判断する際には、以下の3つのルールがあります。

ルール 1: 値が管理限界の外にあるとき

ルール 2: 連続した4つの値のうち3つが平均よりも上限(または下限)に近いとき

ルール 3: 平均の上側(または下側)に連続して8つの値が並んだとき。

上記の3つのルールのうち、どれかに該当する場合はその値はシグナルであると判断し、何が要因になっているのか調査する必要があります。逆にどれにも当たらないのであれば、特に何もする必要がありません。

XmRチャートを作る上での便利な設定

XmRチャートを作る際に、便利な設定について紹介します。

管理限界の範囲に中央線を可視化する

以下のように、XmRチャートの管理限界の平均値と下限、または上限の間に中央線を引きたいです。

これによって、「シグナルかどうかを判断するための3つのルール」のルール2の「連続した4つの値のうち3つが平均よりも上限(または下限)に近いとき」の判断ができるようになります。

Y軸のリファレンスラインの「緑のテキスト」をクリックします。

リファレンスラインの設定のダイアログが表示されるため、「上(下)範囲の中央線を表示」にチェックをつけて適用します。

これによって、「範囲の中央線」を引くことができました。

動画で確認したい方は、下記をご覧ください。

マーカーをライン+サークルに変更する

次に、それぞれのデータポイントをわかりやすくするために、ラインに対してサークルを追加したいです。

Y軸のメニューから「マーカー」を選択します。

マーカーには「ライン+サークル」を選択し、サークルの大きさには「8」を指定します。

これにより、それぞれのデータポイントをわかりやすくするためにマーカーを「ライン+サークル」に変更することができました。

動画で確認したい方は、下記をご覧ください。

最後の値を表示する

XmRチャートを週次、または月次などでモニタリングをしていく際に、最後の値がどれくらいだったのかを確認したいことがあります。

最後の値を表示するためには、設定から「値」を選択します。

次に、値を表示にチェックをつけ、条件には代表値を選択しましょう。代表値のタイプには「最後の値(LAST)」にチェックをつけます。

表示した値のフォントサイズを大きくしたい場合には、フォーマットの下にある「フォントサイズ(px)」を設定します。

これにより、データの最後の値を表示することができました。

軸の設定

次に、XmRチャートなどの時系列の推移を可視化するチャートを見やすくするための軸の設定について紹介します。

Y軸のレンジをフィットさせる

ラインチャートなどを可視化していくと、デフォルトはY軸が0を含むように可視化されています。一方で、ラインチャートは方向が重要なチャートであり、必ずしもY軸に0を含んでいなければいけないわけではありません。

参考: なぜラインチャートは0から始めなくてもよいのか - リンク

そこで、ここではY軸に0を含まずに、Y軸の値にフィットさせる形で可視化をしてみましょう。

設定の「軸」から「Y軸」を選択します。

スケールの中に「0をY軸に含む」のオプションがあるため、チェックボックスを外します。

これによってY軸の値にフィットする形で可視化をすることができました。

X軸のタイトルを非表示にする

XmRチャートをモニタリングしていく際に、X軸は「日付」の列が割り当てられます。そこで、日付だとわかりきっているX軸のタイトルについては非表示にしたいです。

設定の「軸」から「X軸」を選択します。

「タイトル」についてあるチェックボックスを外して適用します。

これによってX軸に表示されていたタイトルを非表示にすることができました。

動画で確認したい方は、下記をご覧ください。

参考資料

  • XmRチャートの紹介 - リンク
  • なぜラインチャートは0から始めなくてもよいのか - リンク
  • 改善のための知識をデータから得るために必要なデータインフォームド文化 - リンク
  • 2つの異なるデータ分析 - 観察データの分析と実験データの分析 - リンク
  • 管理限界の範囲を計算して範囲を超えた時にフラグ付けする方法 - リンク

XmRチャートの紹介シリーズ

  • 管理限界の中央線の表示方法 - リンク
  • マーカーをライン+サークルに変更する - リンク
  • 管理限界を計算する元となるデータの期間を指定する方法 - リンク
  • 特定の期間ごとに分けて管理限界を計算し表示する方法 - リンク
  • XmRチャートを見やすくするためのフォーマット調整術 - リンク
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