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KPI使うとよく起きるコブラ効果

「コブラ効果」という言葉聞いたことありますか?

最近サンフランシスコではプラスチックのゴミを減らすためにということで、カフェでのプラスチックのカップに蓋をつけて出すことが禁止になったのですが、スターバックスではそのせいで蓋のゴミがものすごく増えていると。というのも、どの蓋が自分のカップのサイズにあっているか分からない客が、蓋の置いてあるステーションで色々なサイズを試しては捨てているからです。😱

このことを誰かが「コブラ効果」だと言っていたのですが、つまり、「問題を解決しようとして行った対策によって、当初意図していなかった問題を起こしてしまい、結局もとより状況がひどくなってしまうこと。」を「コブラ効果」というらしいです。

で、なぜ「コブラ」なのかというと、実はこれ、イギリス帝国がインドを植民地にしていた時の逸話がもとになっているとのことです。

1800年代、当時インドを植民地にしていたイギリスはコブラに噛まれて死んでしまう人の数を減らしたいということで、コブラの革を持ってきたらお金を払うという条例を出しました。つまりコブラを捕まえて殺してしまうための報奨を与えることにしたのです。しかし、その結果、人々はコブラを飼育し始めました。というのもより多くのコブラの皮を植民地政府の事務所に持っていけば、よろ多くのお金を手にできるのですから、より多くのコブラを飼育すればいいというのは、少し考えれば誰でもわかることです。

このことで、植民地政府は報奨金の支出は増えるがコブラの数は減少しないという奇妙な状況を目にすることになりました。

その後、ようやくこの報奨制度がうまくいっていない理由に気づいた政府はこの制度をキャンセルすることになりました。すると今度は、これまでコブラを大量に飼育していたビジネスがお金にならなくなってしまったコブラを解放してしまったので、コブラの生息数が一気に増えることになってしまったという逸話です。

さて、なぜ私がこんな話をしているかと言うと、実はこの「コブラ効果」ビジネスでデータを使うことでよくある問題を言い表すのに使えるからです。

以下は、コブラ効果による問題と対策として健康指標をモニターしておくといいという内容のブログ記事の一部の要約です。


The Cobra Effect: How to avoid unintended consequences when setting goals - Link

例えば、プロダクトのデモをする数を20%増やすといったゴールをチームに与えると、そうしたゴールを達成するために、間違ったインセンティブを与えてしまったり、ズルをすることになってしまったりする。

例えば、あなたの営業チームはコンバートするかどうかに関わらず誰でもいいからデモをしようとするかもしれません。結果として、売上が伸びることなくただの会社のリソースの無駄使いに終わってしまうことになります。

そこでは意図していなかった結果やゴールのハックが起こりにくいようにバランスを取るために「健康指標」というものを設定してモニターしておく必要があります。

「健康指標」とは、ビジネスにとっての「健康状態」を損なうことなく、チームがゴールを達成することができているかどうかを判断するための指標です。

先程の例の場合は、コンバーション率を健康指標としてモニターしておくことができるでしょう。

以下に簡単な例を上げておきます。

カスタマーサポートの場合

カスタマーの問い合わせに対する最初のレスポンス時間を短くすることをゴールに課した。

すると、この指標を良くするために、ただ単にレスポンス時間を減らすためだけの役立たないメッセージを返信するカスタマーサポートのスタッフが出てきた。このことにより顧客のサポートに対する満足度が低下した。

この場合は、健康指標としてカスタマーの満足度を計測しモニターしておくことで、レスポンス時間を減らすということが、カスタマーにとって本当に役立っているのかどうかを確認することができる。

マーケティングの場合

マーケティングチームに、営業につなげるためのEメールのサインアップを増やすという課題を課したところ、ウェブサイト訪問ユーザーに対して、ポップアップバナーをたくさん出すという施策を行っていた。

このことで、これをうっとおしいと思ったユーザーが増え、バウンス(サイトに来るがすぐに出ていってしまう)の増加につながってしまった。

この場合は、健康指標として再訪率とバウンス率をモニターすることで、長期的に見て効果的にEメールリストの数を増やしていくことができているかどうかを判断することができる。

営業の場合

例えば、CRMソフトウェアを企業に売っていたとして、営業チームに今年の売上を20%上げることをゴールとして課した。

営業チームは、そのソフトウェアが顧客の問題をほんとうに解決するかどうかに関わらず、どんな見込み顧客でもなりふり構わず売り始めた。結果として、売ったソフトウェアが自分の問題を解決しないことに気づいた顧客からのキャンセルが上昇し始めた。

この場合は、健康指標としてチャーン率とCLTV(顧客生涯価値)をモニターしておくことで、ビジネスの将来の健康状態を損なわずに、売上を伸ばすことができているのかどうかを判断できる。


以上、要約終わり。

あとがき

普段からダッシュボードを使ったり、KPIや指標をモニターしたりしていて、こういう経験があるという人は多いと思います。それでも、ある一つのゴールや指標に集中してしまうあまり、ついつい別の指標を考慮することを忘れてしまうということはよくあります。

ビジネスの一部を最適化してしまうことで、全体の健康が損なわれてしまうということですね。そして、これはそもそもビジネスだけではなく、社会全体にとっても言えることなのかもしれません。

意思決定はデータ・ドリブンではなく、データ・インフォームドであるべきだと普段から言っておりますが、まさにこの「コブラ効果」を意識することで、よりデータ・インフォームドな意思決定を行っていくことができるのではないでしょうか。


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