データ・インフォームドな組織のつくり方 - Part 1 : プロダクト・アナリティクスができるまで

アメリカのベンチャー・キャピタル業界では泣く子も黙る、セコイア・ベンチャーというのがあります。

昔から次から次へとユニコーン規模のスタートアップを世に送りだしている、この業界ではだんとつナンバー・ワンのファームですが、スタートアップにとっていろいろと役に立つ情報も結構共有してくれています。こういった情報は他のファームから出てくるものに比べて圧倒的に質が高いのですが(例えばベンチャーキャピタルへのピッチはみんなここのテンプレートを使ってたりする)、最近データ・インフォームドな会社の作り方という記事が出ていました。

シリコンバレーではデータを使って、データ・バーチュアス・サイクルを作り、プロダクトをどんどんと改善していくことで競争優位を作り、それによってビジネスを急成長させていくというのが当たり前になってきているので、それなりに知見もたまってきているし、ある意味これくらいのことはスタートアップであればみんな知っておいたほうがいいということなのかもしれません。

ということで、日本のみなさん、特にスタートアップの方たちにはぜひ知っておいてほしいなと思い、要訳を3回に分けて共有していきたいと思います。

1回目は、データ・インフォームド企業のコアになる、プロダクト・アナリティクスという機能が組織の中でどのように作られていくのかに関する話です。

そして2回目は、データ・インフォームド企業とはどういう組織なのか、プロダクト・アナリティクスがどうビジネスの成長を推進力となっているのかに関しての話です。

最後の3回目は、データ・インフォームドな組織を作ろうとしたときによく陥る失敗に関してまとめたものです。

本文の中で「アナリティクス」という言葉が出てきますが、これは「データ分析」のなかでも特に「分析」という機能に焦点を当てたもので、技術的に言えば、統計や機械学習のアルゴリズムなどを使った分析である場合が多いですが、役割的には、予測や相関関係(またはその特別なケースである因果関係)に関する分析を行なうことだと考えていただければいいと思います。

以下、要訳。


プロダクト・アナリティクスが必要となるまでの道のり

The Building Blocks of a Data-Informed Company - Link

ビッグデータの時代になると、爆発的に増えていくデータからアクションを起こすためのインサイトを掘り出したいという要望が多くの企業の中で強くなっていきました。

その結果、プロダクト・アナリティクスといわれる企業の中での新しい機能が生まれ、そのことにより多くのA/Bテストと実験が行われるようになり、そのことがプロダクトの素早い改善とリリースの繰り返しにつながあり、そのことによるプロダクトの雪だるま式の成長につながっていくという好循環を生み出すことになりました。

企業がプロダクトを持って市場で競争しイノベーションを起こし続けることができるかというのは、アナリティクスを使って様々な場所にある大量の非構造型のデータからインサイトを取り出すことができるかどうかによってますます左右されていくようになりました。

ここでは、データ・インフォームドなプロダクト・カンパニー(企業)とはどういうものなのかについて話していきます。

「直感とデザイン」ドリブンなプロダクト開発はオッケー、最初の段階は

ここ最近のデータの爆発的な増加が起こる前には、プロダクトは主に直感によって作られてきたものでした。直感はデータに基づくこともありましたが、それはシステム化されたものではありませんでした。直感とはまわりにある定量的そして定性的なデータを無意識なうちに処理することによって形作られるようなものでした。

ここでいうデータとはあなたが実際に目にしたものとそこから学んだことに過ぎないので、データサイエンスのサイエンス的な手法が用いられることはありませんでしたし、そういったデータにはたいていの場合バイアスがかかっているものでした。このことが、時にはかなり大きなリスクを伴った問題のある意思決定につがなることも多々ありました。

これはもちろん、直感がプロダクト開発において使えないと言っているのではありません。データがほとんど無いようなプロダクト開発の初期の時点では、直感はものすごく価値があり、それは今日も変わりません。このフェーズではプロダクト開発はデザインとエンジニアリングに大きく依存し、データサイエンスが果たす役割はあまりありません。

つまり、ほとんどの初期のプロダクトは「デザインと直感」ドリブンだと言えます。

アナリティクス・フェーズ1:数字を数え上げる

アナリティクスが機能として確立しその価値が組織の中で認識されはじめると、データサイエンス、データ・エンジニアリング、データ基盤といった機能がプロダクトの組織の中で重要なものとなってきます。

初期の頃のデータに関する仕事は、数字を数え上げるものです。(何人のユーザーがいるのか、売上はいくらか、など。)こうしたデータの裏には得にサイエンスはありません。

アナリティクス・フェーズ2:数え上げの自動化、ダッシュボード

アナリティクスの次のフェーズではこの数字を数える作業をダッシュボードや可視化を使って自動化します。このフェーズのほとんどは正しいデータを記録し、それがクオリティが高く、正確に定義されたデータであることを確認し、しっかりとしたデータのパイプラインとツールを使ってこうしたタスクを大規模にスケールできるように自動化していきます。

これはデータ基盤とデータ・エンジニアリングの最も本質的な仕事です。

アナリティクス・フェーズ3:実験とサイエンス

アナリティクスの進化における次のフェーズでは、正しいプロダクトの機能がリリースされるということが重要になってきます。ここでようやくデータサイエンスの登場です。つまりプロダクト開発にサイエンス的な手法を適用していくことになるのです。

実験」がこの進化における重要な部分となりますが、それは、「少しずつ改善していくことの力」、そして「直感の限界」という2つの理由があるからです。

まず最初に、私達は大きな勝利を求めがちですが、実際には成功というのは小さいことを正しくやり、それをたくさん行なうことによって得られるものです。時間が経つに連れて、「少しずつの改善」と「複式(雪だるま式に増えていくこと)の力」が効果を発揮し、最終的にはプロダクトの成功の大部分を支えるエンジンとなるのです。

2つ目は、私達の直感はとても間違いやすいということです。多くの場合、適当に選択しているのとたいしてなんら変わりありません。データ・インフォームド企業が継続的な改善を行うためには、「テスト、そして学ぶ」という文化が重要になってきます。

この段階になると、ようやくアナリティクスが無くてはならないものとなってきます。それは、単純に数字を数え上げたり、ダッシュボードを作ったり、プロダクをリリースするためだけではなく、ゴール、ロードマップ、戦略を定義するために重要になってくるのです。

これがアナリティクスのチームを持つことが、最大級の武器となる所以です。

FacebookやInstagramはこのことに関するいい例です。Facebook Live、Instagramのニュース・フィードのランキングや「ストーリー」と言った機能はアナリティクスのチームがもたらす戦略的なインサイトなしには陽の目を見ることはなかったでしょう。

それでは、次回よりいよいよどうやって世界トップレベルのデータ・インフォームド企業を作っていくのか、どうやってプロダクト・アナリティクスの機能を最大限発揮してビジネスに大きなインパクトを与えていくのかについて詳しく見ていきたいと思います。


以上、要訳終わり。

あとがき

本文にあったように、アナリティクス(またはデータサイエンスやデータ分析)は組織の中で、少しずつ進化していくものだと思います。

データサイエンスとかアナリティクスというと、ついつい一番ホットな機械学習や統計のモデリングから入っていこうとする組織が多いですが、そもそも自分たちが考え抜いて作り出したKPIがない状態だったり、あってもトップが気にしていないような状況では、アナリティクスをやってものれんに腕押しとなってしまいます。

早い時期から、チームの数が少ないうちから、みんなで数字を共有し、それをもとにビジネスの成長を議論しあう文化を作り始めるというのは、その後チームがデータ・インフォームドな組織になっていけるかどうかの前提条件です。

逆に言えば、この点こそがスタートアップが大きな企業や組織に対して持っている非常に大きなアドバンテージ(優位な点)だと思うので、スタートアップこそ早いうちからデータを使いこなせるような努力をしていくべきだと思います。

それでは、次回はデータ・インフォームドなシリコンバレーの企業は実際にどうやってプロダクト・アナリティクスを使ってビジネスの成長にインパクトを与えていっているのかについての話に入っていきます。

お楽しみに!


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