LinkedInというビジネス・ネットワークのサービスがありますが(転職サイトのようなもの)、そこでの仕事の応募や採用に関するデータをもとに、彼らが毎月出しているレポートがあります。
大きな都市ごとのレポートとなっているのですが、現在USでは都市によってどういった仕事のスキルが足りていないのか、さらに仕事を求めて人はどの都市からどの都市に移動しているのか、といったおおまかなトレンドがつかめます。
ここでは最新版のサンフランシスコ、ロサンゼルス、そしてニューヨークの3都市について簡単にまとめてみました。
まずはサンフランシスコ、ベイエリア、つまりいわゆるシリコンバレーと言われている地域です。
こちらは不足しているスキルのトップ10です。
この地域の特徴として、やはりテクノロジー関連のものが多いです。ちなみにデータサイエンスは8位となっています。
1位にあるのはOral Communication (口頭でのコミュニケーション) ですが、こういったスキルを持っている人はどの都市でも十分にいないようです。
サンフランシスコ・ベイエリアに仕事のためにやってくる人はどこから来ているのかを示すのが以下のマップです。円の大きさは前12ヶ月の間に移動した、1万人あたりの人数を表しています。
一番多いのがニューヨークからで、その次にボストン、シカゴ、そしてロサンゼルスと並びます。
逆にサンフランシスコ・ベイエリアから仕事のために出ていく人たちが向かう先を表したのが以下のマップです。
AmazonやMicrosoftのあるシアトルが一番多く、その次にオレゴンのポートランド、テキサスのオースチン、コロラド州のデンバーと並びます。
東海岸へいくというのはあまりいないようなのが、ちょっと驚きです。
どうも東海岸から西海岸へ一方的な動きをしているようです。こういうのは、近い将来東海岸で大きな問題となってくるでしょう。東海岸の地方化ですね。
次にハリウッドに代表される映画やエンターテイメント産業のメッカであり、最近ではSnapchat、SpaceXなどといったホットなテック企業も多くなってきているロサンゼルスです。
まずは不足しているスキルのトップ10です。
「口頭でのコミュニケーション」が一番なのはロサンゼルスもいっしょですが、「ソーシャルメディア」が2番めに来ているのはロサンゼルスらしいなという気がします。
ロサンゼルスに仕事のために転入して来る人達を表したのが以下のマップです。
ニューヨークからやってくる人が圧倒的に多いですね。逆にサンフランシスコからというのはあまりないようですね。
仕事のためにロサンゼルスから出ていく人たちの向かい先を表したのが以下のマップです。
一番多いのがラスベガスというのは、距離的に比較的近い上に、どちらもエンターテイメント産業が大きいという、産業的な近さもあるので、納得できます。
次に多いのがサンフランシスコ・ベイエリアです。Apple、Google、Netflix、Facebook、Twitterといったシリコンバレーの企業がどんどんとエンターテイメント業界を飲み込んでいっている昨今では、この傾向はさらに大きくなっていくのではないでしょうか。
最後にニューヨークを見てみましょう。
以下が不足しているスキルトップ10ですが、あまり他の地域と比べて差はないです。
ニューヨークに仕事のために来る人達を表したのが以下のマップです。
ボストンからやってくる人が一番多いようです。
ちなみに、サンフランシスコやロサンゼルスから来る人というのはこのマップには出ていませんが、おそらくあまりいないということなのでしょう。逆の動き、つまりニューヨークからサンフランシスコやロサンゼルスへの移動は多いのと対象的です。
もちろん仕事があるかないかというのがここでの興味の対象ですが、サンフランシスコとニューヨークの両方に住んだことのある私個人の意見としては、東海岸の冬は厳しいので、一度西海岸に住んでしまうと、よほどのことがない限り東海岸に引っ越すことはないと思います。(笑)それくらい西海岸というのは気候的に住みやすいです。
その上、現在のように以前はニューヨークが中心だった金融や広告、メディアといったビジネスがどんどんとシリコンバレーのテック企業に飲み込まれていくにつれ(Software is eating the world)、ニューヨークというのは以前ほど魅力的な都市ではなくなってきているということでしょう。
これはあくまでビジネスという点で、もちろん、文化的にはまだまだニューヨークのほうが個人的にはおもしろいと思いますが。
最後に、仕事のためにニューヨークから出ていく人たちの向かい先を表したマップです。
ニューヨークから出ていく先で一番多いのがロサンゼルス、その次がサンフランシスコ・ベイエリアですね。
ニューヨークはメディア、広告産業が大きいので、そういった人たちがロサンゼルスに引っ越していくことではないでしょうか。
「Software is eating the world」という言葉がありますが、世の中のビジネスがどんどんとソフトウェアベースのものに置き換わっていっていることをNetscapeというウェブブラウザーを作った人であり、現在はA16Zというベンチャーキャピタルをやっているマーク・アンドリーセンが2011年ころに言い始めた言葉です。そしてその中心にいるのが、サンフランシスコ・ベイエリア、もしくはシリコンバレーと言われる地域です。
アメリカのビジネスの重心がどんどんと東海岸から西海岸、ニューヨークからシリコンバレーに移っていっているのだというのが、こうした人の動きからも確認することができます。
この流れは当面変わらなどころか、その勢いはさらに加速していくのではないでしょうか。最近はよくリモート・ワークだとか、シリコンバレー以外の都市でもスタートアップ・シーンが盛り上がっているので、今までのようなシリコンバレーの一人勝ちという状況は変わっていくと言った話をメディアなどで目にすることがありますが、こうやって人の動きを見る限りそうした話はメディアでのハイプ以上の価値はなさそうです。