USに住んで病院に行ったりしてつくづく思うのは、ヘルスケアのコストの高さです。
特に、以前働いていたOracleのような大企業であれば良い保険にカバーされているのでそこまで気にしてなかったのですが、スタートアップをやって最初に痛みを感じたのが、このヘルスケアに関するコストでした。(笑)
こういった保険には個人で加入することになるのですが、はっきり言ってボッタクリに近いくらい高く、さらに毎回病院に行く度に、請求書を巡って電話でやり合わなくてはいけなく、むちゃくちゃめんどくさいです。
なんでこんなにコストが高いのか、疑問に思っていたのですが、最近出版された、”Priced Out - The Economic and Ethical Costs of American Health Care”という本の中に答えがあると知り合いに教えてもらいました。
経済と公共政策の分野で有名なUwe E. Reinhardtというプリンストン大学の教授(すでに亡くなっている)が最後に書いた本のようです。
ちにみに、健康保険、そしてヘルスケア関連のコストそのものがなぜUSは高いのかをわかりやすいチャートといっしょにまとめている記事があったのでそちらを以下の4つにまとめてみました。
確かに以下の1人あたりのGDPとヘルスケアの支出の関係を表したチャートを見ると、2つの変数は相関関係にあるように見えます。(これは、2015年のものです。)
しかし、それでもGDPだけでは説明できないほどにUSのヘルスケアの支出はさらに高いというのも見えます。一般的なトレンドに比べて$2,200ほど高いです。
なので、これはあまり説明にはなっていないですね。
ところで、日本は1人あたりGDPに比べて、ヘルスケアの支出額がけっこう高いんですね。
USでは65歳以上の人たちが全体に占める割合は15%ほどと、他のOECD国(先進国)に比べてかなり低いです。つまり、ヘルスケアの支出が増える世代の比率が他の国と比べて少ないにもかかわらず、ヘルスケアの支出がかなり高いということなので、これは説明になっていません。
ところで、日本は65歳以上の人たちが全体に占める割合は25%ほどで一番高いです。その割には、他の国と比べて1人あたりのヘルスケアへの支出はそんなに高くないのがわかります。
いくつかのハイテクな手法を除き、アメリカ人はヨーロッパ人に比べてヘルスケアのサービス(病院での診断、入院、薬の処方など)を受けることが少ないです。
しかし、USのほぼ全てのヘルスケア関連のプロダクトとサービスは他の国と比べて2倍以上です。
例えば、作るのに17ドルかかる薬品は患者が買う時には100ドルになっていることがよくあるとのこと。この内、保険会社が薬局に払うのが$81ドル、19ドルを自分たちに残し、そのうち3ドルが利益となり、それ以外はマーケティングと管理費となるようです。
どうも、これが一番の問題のようです。
America’s Health Insurance Plansの調査結果の発表によると、企業や個人によって支払われる保険のうち平均で約18%が運営コストとして取られているということです。これはマーケティングと管理費として使われているとのことです。そのうちの3%ほどが利益とのことです。
この抜き取りの率は、オバマケア(USの前オバマ政権時代に行われたヘルスケアの改革法案)が施行される以前は45%に上ることもあったようです。特に非グループの個人が保険を買う場合などです。
これって、私がこの3年ほど買ってきた保険のことですね。なるほど、ここか。。。。
オバマケアによって、この抜き取り率は小さい保険会社であれば20%以下、大きな保険会社であれば15%以下とする制約ができたらしいです。
以下のチャートは、医療業界の医者と管理者(病院の運営に関わる医者や看護婦以外の人達)の人数の成長率を年ごとに表したものです。
圧倒的に管理者の人たちが増えているのがわかります.
ちなみにこれ、Y軸は1970年と比べた成長率です。管理者の人たちが3000%も増えているというのが酷すぎます。
病院がたくさんの管理者の人たちを必要とする一つの理由として、保険会社などへの請求書の処理というのがありますが、ある大学病院(Duke University)では957台の患者用のベッドがあるのに対して、1600人の請求書を扱うことだけを仕事にする人がいるとのことです。
それくらい、USのヘルスケアシステムは難解で、病院側も、保険会社側も専門家をたくさん雇わなくてはいけなくなっている状態とのことです。
本来であればこうした問題は議会の方からヘルスケアの改革法案が作られて解決されていくべきですが、逆に改革と言う名の新しい法案が出てくる度にヘルスケアのシステムはどんどんと複雑になっていくばかりで、そのせいで医療に関わる人や病院は新しいコンサルタントやシステムを雇わなくてはいけない羽目になり、そのことによってさらに管理費が上がり、それによって患者のコストがさらに上がるという悪循環になっているようです。
参考資料:
次回のデータサイエンス・ブートキャンプは11月です!
データサイエンス、データ分析の手法を1から体系的に学び、現場で使えるレベルのスキルを身につけていただくためのトレーニングです。
データからビジネスを成長させるため、または問題を解決するためのインサイトを得ることができるようになりたいという方は、ぜひこの機会に参加をご検討ください!
詳細はこちらのページにあります