こんにちは、Exploratoryの西田です!

現在は来月頭のExploratory v5.0のリリースのための準備で、あいかわらず毎日が慌ただしいですが、いい感じに仕上がってきているので、今から楽しみです。

ところで次回の10月のトレーニングの方は受付を終了しましたが、その次の1月のトレーニングの方の受付を開始しています。早割の方は今月いっぱいですので、データサイエンスの手法やデータ分析をゼロから体系的にいっしょに学びたいという方は、お早めにお申込み下さい!

詳細を見る

それでは、今週のWeekly Update、さっそくいってみましょう!

最近の興味深い英文の記事

未来の仕事 2018年版 - 世界経済フォーラム

The Future of Jobs 2018 by World Economic Forum - Link

世界経済フォーラムより2018年版の未来の仕事に関するレポートが出ていました。先週のマッキンゼーのレポートに近い内容で、これから伸びる仕事としてデータ・アナリスト、データサイエンティスト、ソフトウェアのエンジニアなどが挙げられていましたが、まあ、当たり前といえば当たり前でしょう。

そんななかで、Linkedinの過去5年のデータをもとに需要が上がった仕事のタイプと下がったタイプのそれぞれ10位を地域ごとに出したチャートがありましたが、それぞれの地域に差がありおもしろいなと思いました。

例えば北アメリカでは最も人気が上がった仕事として不動産のエージェントがソフトウェアのエンジニアと同じくらい上がっています。私の住むベイアリア(サンフランシスコとシリコンバレーを含むエリア)では次から次へと成功していく多くのスタートアップのおかげで経済が絶好調です。ですので不動産市場も盛り上がっています。また、スタートアップがどんどんでき、さらにそのなかからユニコーンがどんどんと育っていく環境ということは、それだけオフィスも必要になるということです。ですので、最近のテックブームの一番恩恵を受けているのはベイエリア、特にサンフランシスコの地主だとも言われています。

東アジア(日本を含む)では、人事に関する仕事の需要が高まっていて、その逆に機械エンジニア、プロジェクト・マネージャー、営業マネージャーの仕事の需要が減ってきているというのが印象的です。

世界の貧困のアフリカ化

Justin Sandefurという人がこちらのツイートで、世界銀行とエコノミストから出てきた世界の貧困層の数のトレンドのデータを可視化する2つのチャートを比べていました。

左のチャートがもともと世界銀行から出されていたチャートですが、それに比べて右のエコノミストから最近出されたチャートを見ると、アジアなどの地域では貧困層の数は大幅に減少していますが、アフリカは減少するどころか、増加傾向にあり、世界の貧困とはアフリカの貧困のことになるということがはっきりと分かると思います。

同じデータ、同じチャートのタイプ(エリア・チャート)ですが、地域の順番を変え、アフリカを一番下に持ってきただけで、こんなにもストーリーがはっきりするいういい例だと思います。

しかし、2つほど注意点があります。

1つ目は、2015年以降は予測だということです。いったいどのように予測したら15年後の2030年の結果がこうなるのかというのは少し疑問があります。そもそも15年前に東アジアでの貧困が15年後にはこれだけ減少するということを予測できていたのでしょうか。

2つ目は、上の2つのチャートはどちらも単純に一日あたり$1.9以下で暮らす人たちの総数を表しています。ということは、単純に人口が伸びている国や地域は、そのせいで貧困層が他の地域に比べて大きく増えていっているということで、貧困層がそうした地域で増えていっているとは必ずしも言えないかもしれません。

この辺に気をつけないと、このチャートを作った人たちの意図するストーリーを鵜呑みにしてしまうことになります。

元になるデータがWorld Bankのこちらのページよりとってくることができるので、手元でさくっと可視化してみたところ、エコノミストが意図するものとは少し違ったトレンドが見えました。

詳しくはこちらからどうぞ。

イギリスの統計学者はどのように貧困の指標の定義を変えたのか

How statisticians are trying to change the way we measure poverty - Link

貧困に関してもう一本。

そんなイギリスですが、実は貧困の問題は国内の問題でもあったりします。ですので、王立統計ソサイエティ(Royal Statistical Society)というところがしっかりと貧困の数値化を定義して、それをモニターすることで、その時々の政治家や官僚は貧困の問題の解決策を議論し、政策に反映させていくわけです。

これは、一般の企業が、データを使って自分たちのゴールや課題を数値化し、ダッシュボードなどを使ってモニターし、その数値の良し悪しをもとに、データを分析し、そこから得られたインサイトをもとに意思決定をしていくのと全く同じですね。

で、その王立統計ソサイエティが最近、貧困の指標の定義を見直したという発表がこちらにありました。

これまでは貧困の指標は収入にフォーカスするだけで、資産は考慮していなかったのが、これからは両方とも考慮するとのことです。もしある低所得者だがたくさんの株式を持っていたとしたら、この株式も入れた上でこの人が貧困にあたるのかどうか評価されます。

また身体障害者であったり育児ケアの必要がある場合はそれにかかるコストも考慮されるとのことです。

この変更によって、以前なら貧困層に入っていたような少ない年金で暮らすが資産を持った人たちというのは、この層から外れるようです。逆にそれなりの収入があったとしても子供が多くて育児費がかかっている家族は貧困層になる場合があるようです。

これによって誰が貧困なのかというのが大きく変わってきます。そうするともちろん政策も変わってきますが、それよりもそうした問題を抱えている地域が大きく変わるのではないでしょうか。ということは、熱心になる政治家も変わってきますし、これは選挙にも影響するでしょう。

国の情勢がかわったり、時代が変わってくれば、もちろんその時々の問題を測るための指標も変わるべきです。そうした指標が及ぼすあまりにも大きな影響を考えると、どのような指標を国の重要課題とするべきなのか、またその指標をどうやって定義するのか、誰が責任をもつのかなどといったことは、もっと大きく国民の間で議論になってもいいと思うのですが、肝心のメディアにこうしたデータの話がしっかりできる人がどれだけいるのでしょうか。実はこの辺の人たちのデータ・リテラシーをしっかり上げるということが、国の将来を考えると結構重要なのかもしれませんね。

ちなみに、アメリカでは、おおきなところでは、ニューヨーク・タイムス、ブルームバーグ、FiveThirtyEight、Buzzfeedなどがクオリティの高いデータ分析をもとにした記事をよく出してきます。Buzzfeed、FiveThirtyEightあたりは分析結果がしっかりと再現性のあるかたちでGithubなどで公開されてもいます。

AIの格差と独占

Underneath all the AI hype is the likelihood it threatens the poor - Link

AIによる格差という問題は、こちらのWeekly Updateでもよく話しますし、先週も「AIの脅威はAIではない。独裁者と企業によるデータの独占こそが脅威だ」という記事を紹介したばかりです。

今回は、元Google China(中国)の社長で、今も特にAI関連のスタートアップへの投資などを積極的に行っているKai-Fu Leeが先日サンフランシスコで行われていたAIカンファレンスでのインタビューで、AIは現在の独占企業をさらに強固にして、さらに世界を独占することになるという話です。

「AIは富と不平等を増大させるでしょう。最下級にいるのはAIによって繰り返しの多い仕事を奪われてしまう人たちです。AIは裕福な人達をさらに裕福にし、新しくAIで大きく成功をなす人たちを産み出すと同時に、社会の貧困層からすべてを奪ってしまうでしょう。」

「独占企業というのがどうやって作られ、その独占状態を維持するのか考えてみてください。普通は、リソース(人、資源など)、ブランド、テクノロジー、または参入障壁をもっているということです。しかし現在はAIがもっと多くのデータを提供してくれます。そしてそのことがあなたのプロダクトをよりよくするので、ライバルにとっては対抗しにくくなります。例え他の人たちがお金とブランドを持っていたとしても、あなたに勝つことはできません。なぜなら彼らにはそうしたデータがないからです。このことはいち早くやり始めたもの(early movers)がより大きくなっていくという状況を作り出します。」

これは、少し前に紹介した、Harariも言っていたことですが、これからの時代はUseless Class(使い物にならない階級)というひとたちが、今の中流階級くらいのスケールで出てくる可能性があります。

今の労働組合とか、といったものがまったく意味のないものとなっていくでしょう。つまり、今日の労働者に政治的な力があるのは、彼らの力が国としても企業としても必要なわけです。しかし、その人達の力が必要なくなってしまうとどうなるのでしょうか。

これが、シリコンバレーなど一部で現在実験をし始めているベーシックインカムの背景でもあります。しかし、LeeはAI・データによって世界中の富を独占することになる一握りの企業に対して多くの税金を要求することこそが解決策だと主張します。

日本も「働き方改革」といった後ろ向きの議論よりも、もっとこれからAI・データによって変わっていく将来に向けての前向きな議論をどんどんと積極的に行っていく必要があるのではないでしょうか。

AIが独占されることによる問題 - Link

独占ということでは、同じカンファレンスで、ニューヨーク市立大学とGoogleでのAIの研究員であるMeredith WhittakerがAIが一部の企業によって独占されることによる問題を話していました。

「現在のAIにはバイアスなどの問題がありますが、それが問題になるのは、そのテクノロジーの多くがごく一部の少数の手に握られていて、そのほとんどは、ベイアリア(シリコンバレーとサンフランシスコを含むエリア)に住む裕福な白人男性たちであるということです。」

シリコンバレーの文化にいる人たちが作った、白人、男性、西洋(キリスト教、ユダヤ教)的な文化のバイアスをもつAIが日本人にとって使いやすいものとなるのでしょうか。これはけっこう恐ろしいギャップとなりそうですが、すでに私達はそういったサービスに毎日触れているわけです。(Google、Apple、Facebook、Twitter、Instagram、Netflix、など、きりがないですね。)

「現在のブームはテック業界の力の増加によって起きています。世界的に見ても、7つくらいの企業しか大きな規模でのAIを使いこなせないでしょう。」

先週もお伝えしましたが、現在のペースだと、おそらくAIのサービスを提供するという点ではアメリカ、中国のいくつかの企業に集約されていきそうです。

Quote of the Week

“In a world deluged by irrelevant information, clarity is power.” 

関係のない情報が氾濫している世の中において、明快な視点を持つということは力だ。

by Yuval Noah Harari, author of 21 Lessons for 21st Centuries, Sapiens, etc.

What Are We Writing?

先週は、以下の記事をTeam Exploratoryより出しました。

How to Visualize with Custom GeoJSON Map— Puerto Rico - Link

英語ですが、地図のフォーマットであるGeoJSONファイルをウェブで探してきて、それをExploratoryにインポートして使う方法です。

What Are We Working On?

Exploratory v5.0

v5.0のリリースを数週間後に控えていますが、先週お伝えしたとおり、今回のリリースは大きなUI/UX (User Experience/ユーザー・エクスペリエンス)の変更があります。

そうした変更の一つが「ピン」というチャートやアナリティクスを特定のステップに固定させる機能に関するものです。この機能は昔からあって、知っているとすごく便利なのですが、けっこう気づきにくかったりする機能でもあります。

そこで、v5.0ではチャートとアナリティクスがデフォルトで「ピン」されている状態にすることになりました。これによって、「ピン」されているステップの変更をする必要が以前よりも増えると思いますが、その場合はドラッグ・アンド・ドロップでステップを動かせるようになります。

また、以前はチャートをたくさん作ると“More”というメニューの下に付け加わっていきましたが、v5.0からは横スクロールになります。これで、どこにどのチャートがあるのかチャートのサムネイル画像を見ながら見つけやすくなります。

Exploratory社主催セミナー in 10月

10月のデータサイエンス・ブートキャンプで来日の際にセミナーを行います。データ分析を使ってビジネスを改善するために多くのシリコンバレーの企業で使われているフレームワークであるアナリティカル・シンキングの紹介をします。これからデータ分析を行っていきたいがどう始めていいか、ビジネスの成果にどう結びつけていけばいいかなど、疑問をお持ちの方はぜひこの機会にご参加ください。

セミナーに参加

データサイエンス・ブートキャンプ、1月開催!

おかげさまで来月10月のデータサイエンス・ブートキャンプはすでに満席となってしまいましたので、その次の開催の募集を始めています。次は1月です!

データサイエンスの手法やデータ分析をゼロから体系的にいっしょに学びたいという方は、この機会にぜひご検討下さい!

詳細を見る


それでは、今週は以上です。素晴らしい一週間を!

西田, Exploratory/CEO
KanAugust(Twitter)


こちらのExploratory’s Weekly UpdateはExploratoryのユーザー以外の方も無料で購読できます。まだEmailを登録されていない方はこちら よりどうぞ!皆さんのお役に立つと思うデータサイエンス関連のニュースをまとめたものを週一度配信いたします。