レイ・ダリオの教え:人の意見を聞く前にその人の信頼スコアをまず考えろ

スタートアップを始めるべきなのか、そうでないのか。シリコンバレーに行くべきなのか、そうでないのか。今の仕事を辞めるべきなのか、そうでないのか。

仕事でのミーティングにしても、Twitterやブログにしても、さらには友達や家族と話している時でも、みんな様々な「意見」を述べます。そして多くの「意見」はそれぞれが対立していたりもします。

そんな時に、どの「意見」を参考にするべきなのでしょうか?

そんな時にとても参考になるのが、以前にも何度か取り上げたことのある、世界で一番大きいヘッジファンドの創業者兼元CEOで、現在は会長兼CIO(Chief Investment Officer)であるレイ・ダリオが使っている「信頼性スコア(Believability Weight)」のフレームワークです。

「信頼性スコア(Believability Weight)」とは、例えばチームのメンバーがいたとして、メンバーそれぞれを、彼らの意見がどれだけ信頼できるのかをスコアにしたようなものです。

彼は自分の体験をもとにしたビジネスで(そして私生活でも)成功するための原則をPrinciplesという本にまとめて出していますが、この「信頼性スコア」はこの本の中で詳しく紹介されているのですが、今日はそのうちの10のサマリをここで紹介します。

ところで、彼は自分の考えに忠実に意見を表現するということをよしとする人なので、いくつかのアドバイスは直言で辛口に聞こえるかもしれません。しかし彼は、炎上するために言っているのではなく、年月をかけて何が真実なのかを追い求め続けてきた上での意見なので、そのへんを考慮して受け止めてください。

真実の味とは時には苦いものなのです。(笑)


1. 意思決定には信頼性を考慮するべきである

最高の意思決定は、信頼性の重み付けをされた上でのアイデアの実力主義、すなわちより優れたアイデアが勝ち残ることが保証されている環境によってのみ可能です。こうした環境では能力のある人が他の能力のある人がそれぞれの対立する考えを戦わせ真実に迫っていくことができる。

この信頼性の重み付けによってだれの意見がより重要かといった階層が出きるがそれはアイデアの実力主義を保証する上では致し方無いことだ。というのもいつもすべての人が平等に全てのことを議論していたのではいつになっても仕事が終わらないからである。

2. アイデアの実力主義が効果を発揮するには他人のアイデアのいいところを理解しなければいけない

全ての人を平等に扱うことは真実に向かうというよりも、真実から離れていくことになる。全ての意見は心を広げて考慮するべきであるが、同時にそうした意見を述べた人のこれまでの経験や実績というものを理解した上での話だ。

3. あることに成功できなかったのなら、そのことに関して他人にどうやればいいのか言うべきではない

あることに何度も失敗しているにも関わらず、それがどうなされるべきなのかについて強い意見を持ち続けている人をこれまでに多く見てきた。多くの場合彼らの意見は、そのことに関して成功している人たちの意見と対立しているにもかかわらずだ。

こういうのはバカバカしく、傲慢な態度である。彼らはそうしたうまくいっていないやり方にしがみつく代わりに、どうすればうまくいくのかという質問をし、信頼性の重み付けをした上でいろんな人から意見を聞くべきなのである。

4. すべての人が意見を持っているが、それらはたいていBadだ

意見を言うのは簡単だ。みんなたくさん意見を持っているもので、ほとんどの人はそうした意見を共有したくてしょうがなく、時にはそのために戦うことも厭わない。

しかし残念ながらそうした意見の多くは価値の無いもので、ときには害のあるものでさえある。そしてそれは意見を持っている自分自身にとっても害になっていることが往々にしてあるのだ。

5. 最も信頼できるがあなたと意見を異にする人を探し、その人の論理を理解しなさい

あなたと意見を異にする信頼できる人と心を広げて会話することはもっとも効率的な勉強法で、そのことによってあなたの意見がより正しくなる確立を上げることができるのだ。

6. ある人の意見が良いかどうかを判断するためには、その人がどれだけ信頼できるのかを考慮すればよい

心を広げて他人の意見に耳を傾けるのはいいが、同時にしっかりと見極めなければいけない。素晴らしい意思決定をするための最善の方法は、より多くの知識を持っている人とどう関わるべきか知っていることだ。だれと議論するのかしっかりと見極め、議論するためのスキルを身につける必要がある。

7. あることに関して未経験の人の言う理論が筋道立っていて、試すことができるというのであれば、それは実験すべきだ。

私達が手にしているボールは「確率」なのだということをいつも忘れてはいけない。

8. 信頼性の重み付けは時間とともに人々のこれまでの履歴を体系的に反映させていくべきだ

毎日がまるっきり新しい日ということはない。時間が経つに連れて、エビデンス(証拠)がどんどんとたまってくるので、どの人が信頼できるのか、できないのかということがわかってくるはずだ。

これまでの履歴は重要である。Bridgewaterではベースボール・カードやドット・コレクターといったツールを使ってすべての人の履歴を誰でも見れるようにしている。

9. 人の出す結論そのものよりも、そうした結論を導き出した「論理」に対してこそ、もっと注意を向けるべきだ

多くの会話が、参加している人達が結論を共有して終わってしまっている。そうした結論に行き着くことになった理由を探索することこそが重要である。

10. 経験のない人も優れたアイデアを持っていることがある。そうしたアイデアはもっと経験のある人達よりもはるかに良い場合もある。

なぜならより経験のある人達は古いやり方にはまってしまうからだ。もしあなたが良い耳を持っているなら、経験のない人がしっかりした論理を持って説明できているのかを聞き分けることができるはずだ。

それはある人が歌えるかどうかを知るのと同じで、そんなに時間を必要とするものではない。


あとがき

私達がExploratoryをはじめてこれで3年が経ちましたが、特に最初のころは相当にナイーブで(今もですが。)、スタートアップのビジネスというサバンナに放り出された右も左も分からないひよこといったかんじでした。

ですので、話を聞いてくれる人であれば、そしてお金の匂いのする人であれば(例えば投資家に知り合いがいるといった)、のこのこと出ていって話を聞いてもらったりしていました。そしてそういう人たちからもらったアドバイスを真に受け、混乱してしまったりしていたものです。

しかしその時に受けたほとんどのアドバイスが後になって考えてみると全く役に立たないものばかりでした。なぜならこうしたアドバイスは実際にスタートアップを立ち上げたり、成功させたりしたことのない人からのものが多く、理論的には正しく聞こえるのですが、実際にビジネスを軌道に乗せていく際にはトンチンカンなものばかりというのが現実でした。

逆にその後Exploratoryのビジネスを軌道に乗せていく上で参考になったのは、実際に自分の手でスタートアップをゼロから作り上げた人達からもらったアドバイスでした。

これは何もスタートアップに限らず、個人的なレベルでもよくあることだと思います。

例えばテレビなどでも、自分の専門でもないのに偉そうにわかったような顔をして適当な意見をばらまいているコメンテーターと言われるような人たちがいますが、私達はついついそういう人たちの意見を、専門家の意見と同じくらいの重み付けで聞いてしまったりします。そして、そのコメンテーターの意見と議論の対象となっている領域の専門家の意見が対立していた場合、2人の意見を同じレベルのものとして受け入れてしまったりします。

また、キャリアなどもそうですね。何か新しいことをしようとしたり、新しい会社に行こうとしたり、海外に行こうとした時に、そういったことをしたことがない人たちや、それどころか自分のキャリアさえうまくいってない人たちの意見を、説得力があるからという理由で聞き入れてしまったりすることがあります。

現在私達の生きる世界は変化がものすごく激しく速いので、昨日までの答えが今日の答えになりません。ということは、絶えず必死に答えを見つけていく努力をしていかなくてはいけません。

そのためには、1人で努力するのでなく、様々な人からの意見を参考にすることが重要になってくるのですが、そんなときには、ぜひ今回の、「信頼性の重み付け」ということを思い出してもらい、誰からの意見を参考にするべきなのか、今話している人の意見は、その分野においてどれだけ信頼に足るのかということを積極的に考えてみてください。

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