日本ではまだのようですが、アメリカではTeslaの人気は高まるばかりです。
アメリカの自動車市場の中でも特に高級車市場では、すでにTeslaの勢いは誰にも止められません。
例えば、以下は今年のそれぞれの月ごとの売上台数をBMWの3/4シリーズと比べたものです。
左がTeslaで右がBMW、さらに今年のそれぞれの月の売上台数です。
これはBMWだけではなく、ドイツ車一般に言えることです。
そしてその勢いはすでにヨーロッパでも感じられるほどになってきてるようです。オランダやノルウェーでは今年の売り上げ台数ナンバーワンがTeslaとのことです。これは全てのタイプの車、電気もガソリン車も含め、さらに高級車も一般車も全て含めてということです。(リンク)
ところでこのTeslaが大人気であることによって、USの、高級車の中古車市場に大きな変化が起きているようです。そのことについて書かれた「Tesla Effect(Tesla効果)」と言うレポートが金融会社のCapital Oneから最近出てました。
中古車市場では、ベンツ、アウディ、BMWといった以前は強い需要のあったドイツ系の高級車に対する需要が消えてなくってしまったかのようだとのことです。
というのも、まだ比較的新しいドイツ系高級車でも、Teslaを買うために下取りに出す人が後を絶たないからです。なんでも、下取りに出される車は圧倒的にドイツ系で、日本車や韓国車を全て足した数よりも多いとのこと。
このせいで、現在中古車市場ではベンツ、アウディ、BMWといった車が溢れているようで、こうした車に対する需要が特に上がっているわけでもないので、値段が下がってきているとのことです。
3年落ちのベンツのCクラスとかBMWの3シリーズであれば、トヨタのカムリやホンダのアコードの新車よりも安いとのことです。
記事では、Teslaのモデル3の人気の理由として、自動運転のテクノロジー、BMWの3シリーズよりも速い加速力、トヨタのプリウスを鼻で笑ってしまうほどの省エネ力、といったものを挙げています。
Teslaがなぜ人気あるのか、こんなにも成功しているのか、というのはもちろん様々な理由があると思います。こんなに優れている会社の成功を単純に一つの理由として説明するのはナイーブであるかもしれません。
しかしそれを承知した上で私が強調したいのは、Teslaの快進撃は「Software is eating the world」という文脈の中で考えるべきだということです。
Teslaを電気自動車というハードウェアを作っている会社ととらえるよりも、Appleのようにハードウェアとソフトウェアを垂直統合したプロダクトを作っている会社だと捉えるべきです。
2007年、ソフトウェアが「電話/携帯音楽プレーヤー」というハードウェアを飲み込んでしまったiPhoneが出てきた時に、初めて手にした時のワクワク感を私は今でも覚えています。これがソフトウェアの力なのかと。
そしてソフトウェアがハードウェアを飲み込んでしまうことで、最も重要なことはプロダクトの改善サイクルが圧倒的に速くなるということです。
AppleのiPhoneと同じように、Teslaのプロダクト(車)の改善はソフトウェアのアップデートとして頻繁に、そして消費者にとっては簡単に、届けられます。家から一歩も出ることなくボタンを押すだけで、車の機能がアップグレードされてしまうのです。
この改善は、何も社内のスクリーンや音楽などのエンターテイメントに関するものだけではなく、車の加速力や、車高、バッテリー効率といった従来であればハードウェアによってもたらされた改善を含みます。
さらにソフトウェアであることによって、車についている様々なセンサーからデータを集めることができ、集めたデータからより多くのことを学び、プロダクト改善する、さらにそうした「改善」機能をソフトウェアのアップデートという形でリリースすることができます。
こういったデータとソフトウェアをもとにした改善のサイクルを「データ・バーチュアス・サイクル」と言います。
Teslaはこの点で、「Software is eating the world」からうまく「Data is eating the world」の革命へと進化しているいい例だと思います。
Teslaの話をする時にいつも思い出されるのが、経営コンサルタントの大前研一という方のTeslaに対するコメントです。
その生産量はハイブリッド車やPHVで圧倒的なシェアを誇るトヨタが世界一であり、いまだ25万台程度しか生産していないテスラなどは足元にも及ばない。 論点を整理すればEV化は日本の自動車メーカーの命取りにはならないと私は思っている。
普段はするどい洞察に満ちたコメントをされる方で、私も若いときは彼の本から多くを学んだものでした。しかしそんな彼でもソフトウェアの話になったとたんに2000年ころの感覚のままのようで、現在進行中の「Software/Data is eathing the world」といった革命を捉えきれないかのようです。
そしてこのことは、実は日本の大企業の経営層全般に見られる現象なのではないかと思います。
現在Teslaが起こしているイノベーションをハードウェアの問題だとしてしか捉えてしまうことで、本質を捉えることができない限りは、携帯電話がiPhoneとAndroidに飲み込まれてしまったのと同じことがこれから自動車産業にも起きるのではないかと不安です。
さてUSの市場では、すでにドイツ車は「命取り」の状況に追い込まれていますが、日本車はどうでしょうか。
直近の3Q(7月、8月、9月)のUSの売上台数上位のチャートを見ると、Teslaが日本車をいよいよ射程圏内に入れてきたようです。
日本の国内市場はまだ大丈夫かもしれませんが、もともと日本の車やその関連部品メーカーはUS市場で大きく稼いできたわけですから、US市場でシェアを失い始めると、それこそ「命取り」といった状況になりかねないのではないでしょうか。
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