Facebookが使い出したことで有名になったエンゲージメントを測るKPI — DAU/MAU比率

どうも!ExploratoryのIkuyaです。

突然ですがSaaSのビジネスや、Facebookなど広告で収益をあげるサービスで良く使われる指標にDAU / MAU 比率というものがあります。

DAU / MAU 比率はユーザー・エンゲージメントをモニターするために利用されるのですが、こちらについて理解を深めることができる面白い記事がA16Z(Andreessen Horowitz)のアンドリュー・チェンから出ていたので、本日はそちらを紹介します。A16Z(Andreessen Horowitz)はシリコンバレーでトップ5に入るベンチャー・キャピタルです。

  • DAU/MAU is an important metric to measure engagement, but here's where it fails - Link

なお、こちらの記事でDAU / MAU比率を集計・可視化する具体的な方法について記事を書いていますので、よければこちらも読んでみてください。

  • SaaSアナリティクス:エンゲージメントKPI — DAU / MAU 比率の計算と可視化 - Link

以下、要約。


DAU / MAU 比率

DAU / MAU 比率はユーザー・エンゲージメントをモニターする一般的な指標の1つで、月間のアクティブユーザーに対する1日のアクティブユーザーの比率を表しています。

そして一般的にDAU / MAU 比率が平均して20%を超えるサービスは優秀と言われ、50%を超えると世界レベルで優秀なサービスと言えます。

この指標はFacebookが使い始めたことで一躍有名になりました。特にコンシューマ向けアプリの多くが近年、このDAU / MAU 比率を重要指標として使っています。

なおFacebookのDAU / MAU 比率は驚くことに50%を超えています。気になって、過去から継続してこのような数値だったのか調べたところ、2004年のメディア・キット(訳者注:報道関係者向け資料)には、まだ7万ユーザーしかいない頃ではあるものの 、彼らのDAU / MAU 比率が当時から非常に高かったことが分かりました。(訳者注:Daily Unique Usersから全ユーザーの65%が1日に1度以上利用していること、Monthly Unique Usersから全ユーザーの95%が月に1度以上利用していることが分かります。従ってDAU / MAU比率が68%超になるわけです。

DAU / MAU 比率の誤解

DAU / MAU 比率は非常に有用な指標です。一方でDAU / MAU 比率が低いという理由でプロダクトが市場に受け入れられていないと、みなされてしまうことがしばしばあります。

例えばトップダウンではなく、ユーザーから導入が進むSaaSプロダクトやコンシューマ向けプロダクトのように頻繁に使われるアプリケーションの場合、この指標は非常に強力です。

こうしたプロダクトには大きな価値があるといえますが、これらだけが価値あるプロダクトだというわけではありません。例えば、使用頻度は低くても、一回の利用価値が高いプロダクトもあるわけです。

そういった場合、DAU / MAU 比率の「絶対値」が唯一無二の指標ではない場合もあるわけです。下記にいくつか、そういった例を紹介します。

  • Uberでは最も収益性が高い顧客は、仕事での出張のために空港に向かう顧客などです。ただ、そういった顧客の利用は毎日あるわけではありません。その他にも通勤・通学で利用されるケースもありますが、それも一般的なケースではなく、特殊なケースなわけです。 結果としてDAU / MAU 比率は50%以下です。
  • Likedinの利用頻度も高くはありません。というのもLinkedinのサービスは転職意欲などが高まったときなどに急に利用されるものです。
  • 同様にAir BnBやBookingといった宿泊予約サービスも一般的に年数回しか使われることはありません。にも関わらず、これらの宿泊予約市場には数十億ドルの収益規模の企業が存在しています。

業界・カテゴリ別のサービス利用頻度とリテンション率

ところでDAU / MAU 比率をより深く理解するために、アプリケーションの利用頻度とリテンション率をカテゴリ毎にプロットした面白いチャートがFlurry(訳者注:モバイル・アプリケーションの分析サービスを提供する米国企業)から出ています。(訳者注:下記のチャートではX軸が利用開始から90日後のリテンション率を表しています。またY軸は一週間あたりの利用頻度を表しており、今回のDAU / MAU 比率に近い指標となっています。そして1つ1つの点はアプリケーションのカテゴリを表しています。つまり右上の象限にいる点は利用頻度が高く、継続して利用されるカテゴリーであることが分かります。)

このチャートからは以下のことが分かります。

  • ソーシャルゲームなど中毒性が高いものは利用頻度が高く、一方で90日というスパンで見ると多くの人が辞めていく傾向があります。
  • 天気に関するカテゴリは毎日というほど頻繁に見ることはなく、曇りの日にしか見ないかもしれません。しかし生涯を通して天気は確認する必要があるので、90日後のリテンション率は非常に高くなっています。
  • コミュニケーションツールは言うまでもなく、高頻度かつ高いリテンション率を誇ります。

DAU / MAU 比率を改善しようとしてよく犯す失敗

ではDAU / MAU 比率を上げようとして、よくやってしまう失敗が何かと言うと、キャンペーンやプッシュ通知を増やすことで、DAU / MAU 比率が伸びると錯覚してしまうことです。

私の経験上、それはDAUを一時的に増やすことにはなりますが継続的に増やすことにはつながりません。結果としてDAU / MAU 比率が悪化してしまうわけです。

またDAU / MAU 比率が10%を下回るプロダクトの場合、プロダクトなどの改善を重ねたとしても、40%まで上昇するといったことは一般的にはありません。そういった意味において、プロダクト・カテゴリーが分かれば、ある程度適正な値かどうかが分かります。

DAU / MAU 比率が低いカテゴリーでは何をモニターするべきか

もしDAU / MAU比率があまりに低いようであれば、ヘビーユーザーにフォーカスするというやり方があります。

例えば毎日プロダクトを使ってくれたユーザーが先週、何人いたのか、それが全ユーザーの何%だったのかという指標が有用です。

そして、それらの人がどのような機能を使っていたのかを理解することや、どのようにしてそのようなユーザーを増やしていくのかを検討することが重要です。そういった意味ではヘビーユーザーを認識することはビジネスを伸ばすうえで非常に重要になります

同時に、サービスの利用回数と何が相関しているかを理解することも同じぐらい重要です。例えば、どのくらいコンテンツを作成するような行動をとったかなどです。

そして、それらの指標を意図的に上下させた際に、DAU / MAU 比率も連動して上下するのかをコホートごとにモニターしていくことが重要になるわけです。

訳者注:こちらにコホートごとに特定の値を集計する方法を紹介する記事があるので、よければ読んでみてください。

  • SaaSのコホート分析でよく使われるレイヤー・ケーキ・チャートの作り方 - Link

まとめ

DAU / MAU 比率は非常に有用である反面、うまく付き合う必要があります。もし、あなたのプロダクトが利用頻度が低く、また急激に需要が高まるようなものであるのであれば、別の指標を追うことを検討した方が良い場合もあります。

重要なのは、あなたのプロダクトがユーザーに価値を提供していることをきちんと計測できる自身のビジネスに見合ったぴったりの指標を見つけることです。


以上、要約終わり。

あとがき

本日はDAU / MAU 比率についての記事を紹介をしました。

本文でも言及されていたように、プロダクトのカテゴリーによって顧客の利用頻度や利用の仕方は大きく異なります。従ってDAU / MAU比率のモニターする時に気をつけないといけないのは、日毎のスコアのそのものに一喜一憂するのではなく、自分たちのプロダクトがどのようなカテゴリに属すかを理解したうえで、全体的な傾向を捉えるということです。

また、こちらも本文でも言及されていましたが、サービスによっては、DAU / MAU 比率よりも、例えば毎日プロダクトを使ってくれるようなヘビーユーザーの数や、彼らのプロダクト内でのアクティビティに注目することが有効だったりします

そういったユーザーを把握する方法の1つとしてパワー・ユーザー・カーブといった可視化の方法があるのですが、こちらについては、また別の機会で取り上げたいと思います。

また一方でユーザーのエンゲージメントを高めるアクティビティを理解するには実は統計や機械学習のアルゴリズムと業務知識を掛け合わせることが有効です。こちらについては後述のセミナーやトレーニングにて説明させていただきます。


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