SaaSビジネスの重要指標(メトリクス)ついて紹介します。
サブスクリプション型のビジネスは購読型のビジネスのため、売り切り型のビジネスと異なり、何事もなければ翌月も前月と同じだけの収益を見込むことができます。
このように、月ごとや年ごとに繰り返し得られる収益のことを「定期収益」や、「リカーリング・レベニュー」と呼びます。
この定期収益に関する指標は以下にて詳しく紹介しています。
SaaSのビジネスでは顧客のコンバージョンだけでなく解約が発生します。
仮に新規で獲得した顧客が10人いたとしても、元々いた10人の顧客が解約した場合、結果的にビジネスは成長しなくなってしまいます。
こうした背景もあって、サブスクリプション型のビジネスでは新規顧客の獲得だけでなく、解約に関する指標が重要となります。
このような顧客のサービスの解約のことをチャーンと呼び、チャーンした顧客の割合をチャーン率といった指標でモニターします。チャーン率については以下にて詳しく紹介しています。
顧客がサービスを解約することをチャーンと呼びますが、その逆に顧客がサービスなどを継続することをリテンションと呼びます。
リテンションはチャーンと同様に、サービスを継続した顧客の割合をリテンション率という指標でモニターします。リテンション率については以下にて詳しく紹介しています。
ARPUとはAverage Revenue Per User の略で、顧客1人から得られる平均的なMRRとなり、以下の計算から求めることができます。
なおARPUはARPC(Average Revenue Per Customer)やARPA(Average Revenue Per Account)と呼ばれることもあります。
ARPUは1ユーザーから得られる収益の質の高さを表しています。
ASPとはAverage Sales Priceの略で、新規顧客から得られる平均的なMRRを表しています。
ARPU(1ユーザーあたりの平均収益)と似た指標ですが、ASPは新規顧客のみが計算の対象となる点に違いがあり、以下の計算で求めることが可能です。
ASPは営業チームが新規顧客との取引サイズを拡大できているかを理解することに役立ちます。
また、ASPはCLV(顧客生涯価値)が増加するか減少するかどうかの早期の指標にもなり、時系列での変化を比べたり、ユーザーのセグメントで比較してモニターすることもあります。
コンバージョン以外にもSaaSのビジネスには成長を加速させるエンジンがあります。例えばそれは契約しているプランのアップグレードによる増収です。このような増収のことをエクスパンションと呼びます。
エクスパンションに関する指標は以下にて紹介しています。
MRRエクスパンション率は、前月のエクスパンションMRRが翌月どのぐらい成長したか表す指標です。
当月のエクスパンションMRRと前月のエクスパンションMRRの差を前月のMRRで割ることで求めることができます。
チャーン以外にもSaaSのビジネスの成長は抑制するブレーキがあります。それは顧客が契約しているプランのダウングレードによる減収です。このような減収のことをコントラクションと呼びます。
コントラクションに関する指標は以下にて紹介しています。
ネット・レベニュー・リテンション率は既存顧客からの収益がどの程度、増加または減少したのかを割合で表した指標です。
多くの場合、既存顧客から得られる当月のMRRを、前月のMRRで割ることで求めることができ、ネットMRRリテンション率やネット・ダラー・リテンション(NDR)率と呼ばれることもあります。
例えば、月初に10万円のMRRがあり、月末までに1万円分のチャーンが発生した場合、既存顧客から得られる翌月のMRRは9万円となるのでネット・レベニュー・リテンション率は90%となります。
またエクスパンションMRRの合計がチャーンMRRやコントラクションMRRの合計よりも大きければ、ネット・レベニュー・リテンション率は100%以上となります。
例えば、月初のMRRが10万円だったとして、チャーン(解約)によって1万円分のMRRを失う一方で、既存顧客からのアップグレードによって2万円分のMRRの増収があった場合、ネット・レベニュー・リテンション率は110%になるわけです。
ネット・レベニュー・リテンション率は、ビジネスの全体的な健全性を理解したいときに便利な指標です。
また顧客をセグメントに分けて、全顧客の数値と比較することでどのセグメントの顧客が健全と言えるのか、あるいは言えないのかを理解することが可能です。
詳しくは以下にて紹介しています。
ネガティブチャーンとはエクスパンションによる収益増が、チャーン(解約)や、コントラクションによる収益減を上回る状態を指します。
この場合、 ネット・レベニュー・リテンション率は100%以上の値となります。
そしてネガティブ・チャーンが発生しているということは新規顧客からの収益が発生しなくてもビジネスが成長する状態になっていると言え、新規顧客からの収益がそのままビジネスの成長になるわけです。
詳しくは以下のリンクよりご確認ください。
SaaSのビジネスの収益に関する指標の1つにMRR(月間定期収益)がありますが、MRRをモニターしているだけでは、ビジネスを効率的に伸ばせているかを理解することができません。
そこで顧客の購読タイミングごとにコホート(グループ)に分けて、そのコホートごとのMRRを集計・可視化するレイヤーケーキと言われるチャートを作成する方法を紹介します。
顧客の解約に関する指標の1つにチャーン率がありますが、チャーン率だけでは顧客を効率的にリテンション(維持)できているかが分かりません。
そこで、購読タイミングごとに顧客をコホート(グループ)に分けて、サービスの利用開始からのチャーン率を経過時間ごとに集計することができるのですが、それらの指標を集計・可視化して、顧客のチャーンのトレンドを的確に理解する手法である生存分析のアルゴリズムを紹介します。
SaaSのビジネスでは、売り切りのビジネスと異なり、顧客が解約するまで継続して収益が得られるため、顧客から得られる通算の収益が1度の取引で決まりません。
従って顧客の獲得にどれだけの費用をかけられるのかを知るために、顧客から得られる通算の収益であるCLV(顧客生涯価値)を試算することがよくあり、以下にて詳しく紹介しています。
CLVとセットでよく利用される指標にCAC(Customer Acquisition Cost / 顧客獲得コスト)というものがあります。
これは顧客獲得にかかった総費用を、獲得した顧客の数で割ることで求められ、1人の新規顧客の獲得にかかる平均的な費用です。
CAC(顧客獲得コスト)はCLV(顧客生涯価値)と比較しながら現在のビジネスの健康状態を理解し、さらには将来の顧客獲得のための戦略を検討していくことになります。
ビジネスが継続的に成長していくためにはCACはCLVよりも小さい必要がありますが、ビジネスのステージや成長戦略によって例外もあります。
例えばマーケットシェアを取るために顧客獲得を優先させ、マーケットシェアを取った後に顧客のCLVをあげていくという戦略もあるからです。
ペイバックピリオドは、顧客獲得にかけた費用を平均して何ヶ月で回収できるかを表した指標です。
CAC(顧客獲得コスト)を1人の顧客から得られる平均的な月間粗利益で割ることで求めることができます。
なお1人の顧客から得られる平均的な月間粗利益はARPU(1ユーザーあたりのMRR)に粗利益率を掛けることで計算が可能です。
Quick Ratioはビジネスの成長の効率性を測る指標です。
新規顧客から得られるニューMRRとプランのアップグレードによるエクスパンションMRRを足したものを、チャーン(解約)によって生じるMRRとプランのダウングレードによるコントラクションを足したもので割ることで計算されます。
ユニット・エコノミクスは1人の顧客を獲得したときに、獲得にかけたコストに対して、どの程度のリターンが得られるかを割合で表した指標となります。
そして、CLV(顧客生涯価値)をCAC(顧客獲得コスト)で割ることで求めることができます。
一般的なSaaS企業において、3を超えることが望ましいと言われています。
DAU/MAUはFacebookが使い始めたことで有名になった指標で、DAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)をMAU(マンスリー・アクティブ・ユーザー)で割ったものとなり、サービスをどれぐらい頻繁に利用しているかを計ることができます。
また顧客をセグメントに分けて、全顧客やグループ間でDAU/MAU比率を比較することで、どのセグメントの顧客がより頻繁にサービスを利用していると言えるのかを理解することが可能です。
詳しくは以下にて紹介しています。
プロダクトやサービス全体のエンゲージメントがどうなっているかをモニターしていくことは言うまでなくも重要ですが、一方でユーザー1人1人に焦点をあて、自分たちのサービスやプロダクトを熱狂的に利用している人や、あまり利用していない人がどの程度いるかを理解することは、サービスやプロダクトのエンゲージメントを上げていくためのアクションを検討する上で重要です。
そこで、ユーザーのエンゲージメントの分布を可視化する方法にパワーユーザーカーブという手法があるのですが、詳しくは以下にて紹介しています。
ユーザーのエンゲージメントをサービスやプロダクトの利用頻度や利用時間などで測ることは一般的によくやることですが、サービスやプロダクトによっては単一の指標ではなく、複数の指標を組み合わせることで、ユーザー1人1人のエンゲージメントをより深く理解することが可能となります。
そこで1人1人のユーザーをRecency(直近の利用状況)、Frequency(利用頻度)、Volume(利用量)の3つの指標でセグメントに分け、その分布を可視化するRFV分析という手法があるのですが、詳しくは以下にて紹介しています。
NPS(ネット・プロモーター・スコア)はSaaSの世界では定番なっている、プロダクトやサービスに対する顧客の満足度を測る指標です。
NPSのスコアは「私たちの会社やプロダクトを友人や同僚に推奨する可能性はどのくらいありますか?」といったシンプルな質問の回答から計算されます。
詳しくは以下にて紹介しています。
SaaSやサブスクリプションビジネスの改善に必須である、ビジネス指標(KPI)の定義、コンバージョンやチャーン(解約)の要因分析、さらにそれらの先行指標となるエンゲージメントの計算方法や分析手法を効率的に学び、現場で使えるスキルを身につけていただくためのトレーニングを8月にオンラインで開催します!
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