ブランド認知率は、特定の製品カテゴリーにおいて、消費者が自然に思い浮かべることのできるブランドとして自社が認識されている割合を示すマーケティング指標です。
この指標は、マーケティング活動の成果を測定するものであり、特に新規市場への参入時や新商品のローンチ時、そして大規模なブランディングキャンペーンの効果測定において継続的なモニタリングが必要となります。
ブランド認知率は、マーケティング部門の責任者やブランドマネージャーにとって特に重要な指標であるとともに、経営陣にとっても市場での企業のポジショニングを把握する上で欠かせない指標となっています。
マーケティング担当者の最も重要な役割は、自社の製品やサービスの認知度を高め、顧客の需要を創出することで、持続的な成長を支えることにあります。
そのため、マーケティング担当者は顧客のライフサイクルに合わせて、様々な活動をすることになります。
また、各ステージのマーケティング活動の最適化のためには、個々の活動に対する指標をモニターすることも少なくありません。
しかし、各ステージの最適化が必ずしも、購買サイクル全体を通した最適化には結びつくとは限らず、購買サイクル全体を最適化するためには、効率的に顧客を次のステージに誘導することが必要です。
そこで重要になるのが、それぞれのステージでのマーケティング活動が、いかに成果(次のステージへの移動)に結びついたかを捉える指標(KPI)を定義して、モニターすることです。
そこで、このノートでは、顧客サイクルの最も最初のステージである「認知」のステージの指標である、「ブランド認知率」を紹介します。
認知のステージにおけるマーケティングの目的や役割は、見込み顧客が自社のカテゴリーの製品やサービスの購入を検討した際に、購買候補として思い起こしてもらえるようにすることです。
「認知」のフェーズにおける活動は、テレビCMや、Web広告などの多岐にわたりますが、ここで重要なポイントは、実際に広告を見た人達が、特定の製品カテゴリーの商品(例: ビール)を買おうと思ったときに、自分達の製品を購買候補として検討してくれているか、あるいは思い起こしてくれるかどうかです。
そこで、消費者(潜在顧客)に「糖質ゼロビールについて考えた時に、最初に思いつく企業または商品名を教えてください」といった質問をして、自分達の製品を購買候補として検討してくれているか、あるいは思い起こしてくれるかどうかを測ろうとする指標が「ブランド認知率」になります。
例えば、16名に上記の質問をした際、自社のサービスや製品名を挙げた人が8名だった場合、ブランド認知率は50%になるわけです。
また、ブランド認知率のトレンドを可視化することで、時間の経過とともに、ブランド認知率を改善できているかを理解できます。
今回は1行が1人の回答者を表し、列には、「回答日」「自社の製品を想起しているかどうか」の情報を持つデータを使って、ブランド認知率を計算する紹介します。
今回のデータには、「自社の製品を想起しているかどうか」といったロジカル型の列があるため、「自社の製品を想起しているかどうか」のTRUEの割合を計算すれば、それがデータを計測した期間におけるブランド認知率になります。
そのため、ブランド認知率の推を可視化したければ、チャートビューに移動して、タイプに「ライン」を選択します。
X軸に「回答日」を選択し、データを集計したい単位で日付を切り捨てます。(今回は週ごとに切り捨てたいので、「週」を選択しますが、月ごとに集計したければ「月」を、年ごとに集計したければ「年を選択します」)
次にY軸に「自社の製品を想起している」を選択し、集計関数にTRUEの割合を選択します。
これでブランド認知率のトレンドを可視化できました。
ブランド認知率をXmRチャートで可視化することで、ブランド認知率に特筆すべき変化が起こっているかどうかを理解することが可能です。
作成したラインチャートのY軸メニューからリファレンスラインを選択します。
リファレンスラインの設定ダイアログが開いたら、リファレンスラインのタイプに「平均値」を選択します。
例えば、2021-03-28以降に新しい施策が始まった場合、ベースデータの範囲に、「以前」を選択し、値には「2021-03-28」と入力して、施策の開始したことで注目すべきか変化が起きているかを確認できます。
続いて、範囲タイプに「管理限界(X)」を選択し、「上(下)範囲の中央線を表示」にチェックを付け、適用します。
これで、ブランド認知率のXmRチャートを可視化できました。
2021/7/18週に、ブランド認知率の向上のシグナルを確認することができましたが、その翌週には、通常のバラツキの範囲内に戻ったため、今後、継続してブランチ認知率向上のシグナルが出るかを確認する必要があると言えそうです。
今回のアンケートデータを使って、カスタムRコマンドでブランド認知率を計算したい場合、以下のRコードのサンプルをご参考ください。
# Step 1: 「はい」の回答を論理値に変換
mutate(自社の製品を想起している = str_logical(自社の製品を想起している, true_value="はい")) %>%
# Step 2: 回答日を期間単位に変更
# - 月間(月ごと/月別)のブランド認知率を計算したいときには日付を「月」で切り捨てる
# - 年間(年ごと/年別)のブランド認知率を計算したいときには日付を「年」で切り捨てる
# - 週間(週ごと/週別)のブランド認知率を計算したいときには日付を「週」で切り捨てる
mutate(回答日 = floor_date(回答日, unit = "month")) %>%
# Step 3: 期間ごとにグループ化してブランド認知率を計算
# 今回はあらかじめ日付を「月」で切り捨てているので、月間(月ごと)のブランド認知率を集計する
# 日付を「年」で切り捨てている場合は年間(年ごと)のブランド認知率、「週」で切り捨てている場合は週間(週ごと)のブランド認知率を集計する
group_by(回答日) %>%
summarize(
# 「はい」と回答した人数を集計し、総回答者数で割ってブランド認知率を算出
ブランド認知率 = sum(自社の製品を想起している, na.rm = TRUE) / n()
) %>%
ungroup()
# Step 1: 「はい」の回答を論理値に変換
mutate(自社の製品を想起している = str_logical(自社の製品を想起している, true_value="はい")) %>%
# Step 2: 回答日を期間単位に変更
# - 月間(月ごと/月別)のブランド認知率を計算したいときには日付を「月」で切り捨てる
# - 年間(年ごと/年別)のブランド認知率を計算したいときには日付を「年」で切り捨てる
# - 週間(週ごと/週別)のブランド認知率を計算したいときには日付を「週」で切り捨てる
mutate(回答日 = floor_date(回答日, unit = "month")) %>%
# Step 3: セグメントと期間ごとにグループ化してブランド認知率を計算
# 今回はあらかじめ日付を「月」で切り捨てているので、セグメントごとの月間(月ごと)のブランド認知率を集計する
# 日付を「年」で切り捨てている場合はセグメントごとの年間(年ごと)のブランド認知率、「週」で切り捨てている場合はセグメントごとの週間(週ごと)のブランド認知率を集計する
group_by(セグメント, 回答日) %>%
summarize(
# 各セグメント・期間ごとに「はい」と回答した人数を集計し、各セグメント・期間の総回答者数で割ってブランド認知率を算出
ブランド認知率 = sum(自社の製品を想起している, na.rm = TRUE) / n()
) %>%
ungroup()
今回、紹介したブランド認知率の作り方に加えて、マーケティング担当者にとって重要な指標とその作り方を紹介する動画を公開しています。ぜひ、ご覧ください!