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AIとビッグデータの導入に苦しむのはどこも同じだが、それでも前進を加速させるアメリカの大企業

New Vantage Partnersというアメリカのデータにフォーカスしたコンサルティング・ファームがアメリカの大企業のAIとビッグデータの採用に関する最新状況の調査結果を”Big Data and AI Executive Survey 2019 - Link”としてまとめたレポートを出していました。  インタビューされた企業はアメリカの昔からある大企業で、シリコンバレーにあるようなデータ・AI先進企業は入っていません。

それでも、そのリストはフォーチュン100に入ってくるレベルの企業が多く、特にビッグデータに関しての導入は昔から積極的に行ってきている企業ばっかりなので、日本の企業にとっては参考になるのではないかと思いこちらで要約という形で紹介します。

以下、要約。


要点

忙しい人はこちらの要点だけ読んでいただければと思います。

  • 企業はビッグデータとAIへの投資を加速している。
  • 多くの企業がデータ・ドリブンなビジネスへの移行に手間取っている。
  • AI、ビッグデータを使いこなすための一番の障害は文化的なものである。
  • CDO(チーフ・データ・オフィサー)の役職は現在でも進化の途中だが、間違って定義されているものもある。

インタビュー企業のリスト

まず、インタビューされた企業のリストは以下のようになっています。

金融、保険業界

ヘルスケア、その他

インタビューに答えた人たちは、基本的にはCDO(チーフ・データ・オフィサー)、CAO(チーフ・アナリティクス・オフィサー)、CIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)といったCレベルの人たちで、この3つの職が90%ほどを占めています。

ほぼ全ての企業がAIへの投資に集中している

ここ最近のキーとなるテクノロジーに対して、回答者のどれくらいの割合が自分たちの企業にとって重要だと考えているかを表すのが以下です。

2017年と2019年を比べるとAI/機械学習のエリアへの投資が68.9%から96.4%へと大きく伸びているのが顕著です。現在ほぼすべての企業がこの分野への投資に本気になっています。

ブロックチェーンなどはまだまだのようです。

現在のデータ・AIによる企業変革の状況は?

  • 71%の企業がデータ文化というものを作ることができていない。
  • 53%の企業がデータをビジネスの資産として管理することができていない。
  • 52.4%の企業がデータやアナリティクスを使って他企業と戦うことができていない。
  • 69%の企業がデータ・ドリブンな組織を作ることができていない。

計測できるような結果を出すことに苦しんでいる

去年は、62.2%の企業がAI、ビッグデータへの投資から計測できるような結果を出すことができているとのことです。

ただ、まだ数多くの企業は結果を出すことに苦しんでいるようです。

しかし分野ごとに差はあるようです。

一番結果を出すことができているのが、アドバンスド・アナリティクスで、80%近くが結果を出すことができていると回答しています。

なぜAI/ビッグデータの導入に苦しむのか?

77%の回答者がAI/ビッグデータの導入に苦しんでいると言っていましが、理由として一番大きいのは、企業文化と組織編成に関する問題であるとのことであり、逆にリーダーシップやテクノロジーの問題ではないということです。

データ・ドリブンな組織を作るための障害

やはり、テクノロジーではなく、人とプロセスが大きな理由です。

CDO(チーフ・データ・オフィサー)がいるか

CDO(チーフ・データ・オフィサー)という役職はまだ比較的最近のものですが、それでもインタビューしたうち67.9%の企業ではCDOがすでにいます。

誰が組織の中のデータに責任をもつのか

組織のデータに関して全責任をもっているというチーフ・データ・オフィサーやチーフ・アナリティクス・オフィサーは半分以下(48.1%)で、逆に一本化されていないというのが28.4%となっています。

ちなみに、CIOがデータの全責任を持つというのはどんどんと下がっており、最新ではインタビューした企業のうちのたったの4.9%ほどとなっています。

成功するCDOのタイプ

企業がCDOに求めるプロファイルは大きく2つに分かれるようです。一つは外部から変化をもたらすことが出きる人(External change agent | outsider)、もう一つは企業の中にいるベテランの人(Company veteran | insider)です。

すでに見てきたように、企業がAI/ビッグデータの導入を成功させるには、企業文化や組織編成における変化が必要であり、データドリブンになっていくためには人とプロセスが障害になるわけですから、やはり組織に長いこといて様々な部門と調整をとることが出きるベテランの人が求められるのには一理あります。

それとは対象的に、CDOに求められるプロファイルとして低いのが、データ・サイエンティスト、テクノロジー関連の重役(CIO、CTOなど)などであるというのは意外である気もしますが、チーフ・データ・オフィサーはそもそも分析やアルゴリズムを作る責任を持つというよりは、データの安全性、ガバナンス、プライバシー、整合性、などといったことの責任をもつわけですからもっともな気がします。

普通は企業の中にはデータ・サイロといって部門が違うとデータを共有するのを嫌がる人たちが多くいます。情報は権力になりますし、逆に他の人達にデータが共有されるとそのことで自分が攻撃されかねないと思う人達もいます。

そうするとますます、組織の中で政治力をもっていて、部門間を調整できるような人こそがCDOに求められるのかもしれません。  —

以上、要約、終わり。

あとがき

「一番大きいのは企業文化と組織編成に関する問題であるとのことです。リーダーシップやテクノロジーの問題ではないということです。」

「52.4%の企業がデータやアナリティクスを使って他企業と戦うことができていない。」

これは私が日本でお話を聞かせてもらっている企業の多くにも共通していると思います。どこの企業でもさすがにもう2019年ですからトップが号令をかけるくらいのことはやっています。さらに大手のベンダーからAIやビッグデータという名のプロダクトやシステムも買わされたりしていると思います。

しかし、その後が続かないのだと思います。

なぜなら、トップの号令やテクノロジーの導入は解決が簡単な問題なのですが、そうしたAIやデータを使ってどのように現在の組織の意思決定プロセスを変えていくかというのは難しい問題だからです。

私達はこの問題を少しでも解決しやすくするようにとの思いで、これからデータ分析をはじめて行きたいという人たちや組織が、継続的にデータをビジネスの改善に結びつけていくためのフレームワークとしてアナリティカル・シンキングというものを提唱しています。

これは何も一から作ったというのではなく、シリコンバレーや他の地域のデータ先進企業では実際に行われているデータを使ったビジネスの改善プロセスを誰にでもわかりやすく6つのステップとしてデザインしただけです。

データやテクノロジーが目的ではなく、ビジネスの改善、もしくは問題解決こそがデータを使う目的なはずです。AIやビッグデータによる変革をテクノロジーの導入として捉えるのではなく、これからのビジネスの意思決定プロセスの変革と捉えて行くべきだと思います。

そして、そうしたときの道先案内人としてアナリティカル・シンキングのフレームワークを参考にしていただければと思います。


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